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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第4章 柱《壱》



「晩餉(ばんしょう)だったな。それならば抜かり無し!」


 何処にそんなもの忍ばせていたのか。と思えるくらい大きな風呂敷に包まれた重箱を杏寿郎が取り出した。
 興味が出て覗き込む私の前で、ぱかりと蓋が開く。
 現れたのは鯛の切り身の塩焼きに、海苔の佃煮、金平牛蒡、蓮根と椎茸の天麩羅、そして黄色いご飯。


「さつまいも弁当だ!」


 さつまいも弁当?
 もしかしてこの黄色いご飯、さつまいもご飯なのかな。

 顔を寄せて匂いを嗅げば、確かにさつまいもの甘い匂いがふんわりと香る。
 大きなお弁当箱に敷き詰められた食材は豪華にも見えるけど…少しばかり彩りが偏って、


「派手さに欠ける弁当だ」

「!?」


 覗いていたお弁当の上に、一つ影が落ちてくる。
 と同時に降ってきた聞き覚えのない声に、驚いて身を退いた。


「身形はド派手な癖に、食うもんは地味だな煉獄」


 其処には知らない男が立っていた。
 いや、多分一度見たことはある。此処へ連れて来られた時に。
 でも一度も言葉を交わしたことはない。

 杏寿郎を遥かに上回る背丈に、筋肉の付いた鍛えられた体。
 袖のない隊服姿に、背中には鎖で繋がれた二本の大きな双刀。
 目を惹く銀髪の上に、宝石のようなものが飾られた額当てをしている。
 そこから垂れている宝石の飾りといい、顔に施してある独特の化粧といい、全体的に凄く派手な男。

 杏寿郎も毛色から目立つけど、体格も増して並べば杏寿郎が普通に見えるくらい。
 見慣れてる度合いもあるけれど、とにかく派手な男だった。


「宇髄か! 何故此処にいる?」

「んなもん一つだろ。鬼なんか連れ回して、こそこそ地味に何してんだって話だ」

「互いの話をしていた!」

「互ィ?」


 うずい? 知らない名前だ。
 でも杏寿郎と対等に話しているところを見ると、もしかしたら…柱、なのかな。


「そうだったな。彩千代少女、彼は宇髄て」

「あーいい、いい。自分でするから地味な紹介はやめろ」


 気を利かせた杏寿郎を遮って、ずいと目の前に巨漢が立つ。
 上背もあるし私は岩場に座っているから、尚の事距離が開いて威圧が凄い。


「いいかよく聞け」


 ごくりと思わず息を呑む。


「音柱の宇髄 天元様とは俺のこと! お前ら地味な民の!!神だ!!!」


 …………は?

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