第4章 柱《壱》
鬼殺隊とは、お館様と呼ばれる鬼殺隊当主が率いる政府非公認の鬼狩り組織。
その当主の下に、鬼殺隊を支える"柱"と呼ばれる戦力の中核を成す剣士達がいる。
お館様の次に位の高い剣士で、九名で構成されたもの。
胡蝶しのぶも、冨岡義勇も、そして杏寿郎も、その柱と成る者だ。
組織の上層部だとは思っていたけど、まさかそんな位の高い剣士だったなんて。
道理で睨まれただけで足が竦んだはずだ。
そして育手とは、鬼殺隊への入隊希望者を育て最終選別へと送り出す者達。
となると育手に預けられた炭治郎や禰󠄀豆子もいずれは、鬼殺隊になるんだろうか。
というか鬼は鬼殺隊になれるの?
【じゃあ杏寿郎は 炎を操ることができるの?】
「炎を操るのではなく、炎の呼吸を操る。それが炎柱だ!」
呼吸って…ああ、鬼と戦う為に必要な人の持つ技のこと。
頷いて返せば「覚えていたな」と褒められた。
杏寿郎との外出も、これで何度目だろうか。
彼が誘いに来てくれる夜が、いつの間にか待ち遠しくなるようになった。
人気のない草道を並んで歩んでは、腰を落ち着かせた場所で色んなことを話す。
鬼殺隊の基礎は全て杏寿郎から教わった。
余りにも色々答えてくれるから、大丈夫なのかと一度心配すれば「問題無し」と即答された。
その証拠に、答えてはくれるけれどこの総本部の在処やお館様のことなど、肝となるようなことは伝えられない。
それでも何も知らないよりは、知っていた方が安心する。
杏寿郎の言うように、知らないものは得体が知れない。
姿が見えて、初めて理解の一歩となるんだろう。
「他に知りたいことはあるか?」
気前よく訊いてくる杏寿郎に頷いて返す。
そうだ、大事なことをまだ訊いてない。
【すごく大事なことなんだけど】
「む!」
【お弁当 持ってきた?】
「…む?」
むん!と威勢の良い腕組み体制のまま、固まる杏寿郎に再度問う。
【だから お弁当】
前回は結構遅くまで話し込んでいたから、途中で杏寿郎のお腹の虫が鳴りっ放しだった。
私は鬼だから問題ないけれど、杏寿郎は人間だから。
お腹に何か入れないと空いてしまうだろうと、次回は何か持ってきたらと提案したんだ。