第9章 柱たちと年末年始✔
「五人だから、一人だけ不戦勝で決勝に上がれるけど。後の四組は準々決勝を勝負してもらいますっ」
「あからさまな待遇の違いじゃないのかな、それ…」
「運も実力のうちだ! それに真に強き者なら、何人相手にしようとも勝ち上がることができる!」
興味なさげな顔でぽつりと呟く無一郎に、杏寿郎が声量過多に返す。
「いいじゃねェかァ死合い上等。誰であっても負かしてやる」
「それなら俺は棄権を」
「離脱は認めないぞ冨岡! 勝者には敗者の意志を継ぐ義務がある!」
「流れに身を任すだけだ…南無阿弥陀仏」
義勇以外そのルールに異論はない様子に、となれば多数決で従う他ない。
乗り気ではない義勇も含め、勝者全員が阿弥陀くじでのスタートを切ることとなった。
「んーっと、えっと…では、発表します!」
それから数分後。
紙を手に片手を上げた蜜璃が、準々決勝の結果を弾き出した。
「一戦目は…煉獄さんと冨岡さん!」
「冨岡か! 相手に不足無し!」
「…俺は別に勝負しな」
「不足無しッ!!!」
「……」
「そして二戦目は…不死川さんと蛍ちゃん!」
「!」
(げ。)
「ってことは…悲鳴嶼の旦那が不戦勝か」
「いいんじゃないですか。悲鳴嶼さんなら決勝に行ける十分な実力を持っていますし」
行冥なら二戦三戦と交えても、簡単に決勝へと勝ち上がるだろう。
しのぶの意見に誰も不満を上げることはなく、行冥が無傷で決勝へと駒を進めることとなった。
「ようやくきたなァ、この時が」
ゴキリと拳の骨を鳴らす不気味な音。
口角が裂けそうな程につり上げこれまた不気味に笑う実弥に、蛍は対象的な負の表情を浮かべていた。
(まさか本当に当たるとは…)
もしかしたら交えることなく終わるかもしれないと思っていた手押し相撲は、期待を期待のままで終わらせた。
見上げた傷だらけの男はとことんまでやる気だ。
「これで遠慮なくテメェのツラ潰せるって訳だ…!」
(なんか目標が更に可笑しくなってる…)
天元の顔面を強打した蛍も大きな顔はできないが、それでも嫌なものは嫌だ。
しかし。
(でも、勝たないと)
負ける気は生憎とこちらにもない。