第9章 柱たちと年末年始✔
「っの、やろ…!」
「そこまで!」
ふらりと揺れた天元の体は、相手の拳が小さなこともあって倒れはしなかった。
しかし揺れた足がバランスを取る為に着いたのは円の外側。
目敏く見つけた杏寿郎が素早く片手を上げる。
「勝敗は決した! 彩千代蛍の勝利だ!」
「はぁ? 待てよ煉獄、こいつは宙を跳んだんだぞ! それこそ違反だろッ」
「ならば蛍少女の足元を見ろ、宇髄」
「?」
赤く染まった顔を押さえながら、天元が見た蛍の足元。
円の中に着地した小さな両足は、最初に立っていた足場から数cmもずれていない。
「宙には浮いたが、足場は一歩も外れていない。よって蛍少女の勝利だ!」
「…ンなのアリかよ…」
「きゃあっ蛍ちゃんの白星ね!」
「うん。やっとうさばらしできた」
「そうなの?」
「憂さ晴らしだぁ? なんのことだよ」
「しらぬはつみだから。ぜいたくものめ」
「だからなんなんだよ。なら教えろよ!」
「い・やです」
誰がわざわざ幸せ者だと教える義理があろうか。食い下がる天元に蛍も嫌の一点張り。
一番に駆け付け喜びを見せた蜜璃は、不思議そうに頸を傾げるばかりだった。
「まさか腕相撲二位の宇髄さんが負けるなんて…本当に大穴でしたね」
「はっ! そうでなくちゃ面白くねェだろォ。次は俺が相手だ鬼ィ!」
「まぁ待て不死川。初戦を勝ち進んだ我らでまた相手は決めなければなるまい。甘露寺、あれを!」
「あっハイ! えっと、次はこれ! 阿弥陀(あみだ)くじで決めます!」
いつの間に作り上げたのか。ぱらりとお手製の阿弥陀くじを見せる蜜璃に、皆の目線が集まる。