第9章 柱たちと年末年始✔
「おぉおおぉおおお!!!」
「はぁあぁああああ!!!」
ぼそぼそと飛び交う周りの言葉を気に止めることなどなく。
両者共に気迫のこもった声を上げながら、譲ることなく力で押し合う。
「あの頃より力を上げたな甘露寺…!」
「ッまだ、まだぁ…!」
「むぅ…!」
ぐぐぐ、と杏寿郎の体が押され後ろへと傾いていく。
「おっこれは弟子が師を超えるか?」
「甘露寺が勝つに一票」
周りが期待で見守る中、力に押され仰け反りながらも杏寿郎は眉一つ動かさなかった。
両手は蜜璃の手を掴んだまま、踏ん張っていた足腰を僅かに落とす。
(──あ。)
「むんッ!」
「ひゃあッ!?」
その僅かな力の変動に蛍が目を見張る中、肘から掌へと力を流すように杏寿郎の動きは緩やかに、しかし瞬く間に蜜璃の手を握ったまま上へと突き上げた。
途端にバランスの崩れた蜜璃の体が傾く。
足腰はしかと地に着いたまま上半身だけでひらりと避けた杏寿郎にぶつかることなく、体制を崩した蜜璃の体は円の外へとどさりと落ちた。
「あたた…」
「ふぅ!」
「煉獄さんの勝ち。ですね」
「負けちゃった…」
「しかし良い勝負だったぞ! あともう一息で押し切られるところだった!」
笑顔で手を差し出す杏寿郎に、その手を握り引いて貰いながら蜜璃も笑顔を零す。
「やっぱり師範は強いです! 私もその力の動き勉強しなくちゃ…!」
「甘露寺ならすぐに覚えられるだろう! 鍛錬を惜しまなければ!」
「御意!!」
「なんっつーか、すげぇあそこだけ空気がキラキラしてんな…」
「煉獄さんと甘露寺さんだから、あんなに良い笑顔で勝負できるんでしょうねぇ」
「他の組は…そうもいきそうにねぇか」
見渡す天元の目に映る残りの組は、一癖も二癖もある者ばかりだ。
果たして、その結果は如何に。