第9章 柱たちと年末年始✔
「どうやら蛍少女もやる気になったみたいだな」
蛍の表情が変わったことに杏寿郎も気付いていた。
例え蛍に剣士の資格はなくとも鬼である。
腕力だけで言えば柱にも引けを取らない。
果たしてこの面子でどうなるのか。
見えない結果に尚面白いと杏寿郎の口角が上がった。
「それではいざ、勝負といこう!」
炬燵で埋まっている檻の中では不可能だと、一歩出た通路で大会は開催されることとなった。
「よし! では最初は手本として俺と甘露寺が勝負をしよう!」
意気込み十分に名乗りを上げたのは煉獄杏寿郎。
そこへ相手となる蜜璃が、はい!と挙手して続く。
人一人だけが入れるだけの円を二つ、天元が地面にガリガリとクナイで削り描く。
「こんなもんでいいだろ」
「ああ。では手押し相撲の勝負法を説明する! 円の内側に立ち、その場から動くことなく互いの体を押し合う。殴る・蹴るなどの攻撃法は禁止だ。あくまでも互いの掌を押し合うことで勝負を決める。そして最後まで円の内側に立っていられた者の勝利となる!」
「では審判は私がしますね。両者共円の中へ」
「うむ!」
「こうして煉獄さんと力比べをするなんて、継子時代を思い出すわ」
「そうだな。初めて継子稽古を始めた時も、まずはこうして向き合い力比べをした」
しのぶに促され、互いに円の内側に立ち向き合う。
二人の会話にそういえばそんなことを話してくれたと蛍も思い出しながら、交互に元師と元弟子を見やった。
杏寿郎が剣士として確かな腕を持っているのは知っているが、純粋な力となれば蜜璃も劣らない。
果たしてどちらに軍配が上がるのか。
「それでは──始め!」
手刀のように振り下ろされるしのぶの手。
それを合図に、杏寿郎と蜜璃の両手が互いにわしりと掴み合った。
「やはり真っ向勝負と来たな!」
「勿論! あの時は負けたけど今度はそうはいきません…!」
ぎりぎりと互いの力が押し合い、中間でとどまり合う。
「…なぁ伊黒」
「なんだ」
「手押し相撲って、掌を掴み合うの禁止じゃなかったっけか?」
「あれで成立しているからいいんだろう。甘露寺の掌を掴むなど死に値するがな…師であった煉獄なら許してやってもいい」
「あ、そ…」