第9章 柱たちと年末年始✔
「おっ。俺の初戦が大穴とはな」
「……」
「なんだ、ビビって声も出ねぇってか?」
「…きんにくにんじゃか…」
「だからその名称ヤメロっつーの」
同じ柑橘色の紙縒を手にしていたのは筋肉忍者こと宇髄天元。
腕相撲では第二位の実力を誇る持ち主である。
「む! 俺の相手は甘露寺か!」
「はいっよろしくお願いします!」
「どう足掻いても負ける予感しかしないんですが…」
「胡蝶か…よろしく頼む…」
「チッ」
「…ふぅん」
「……」
「冨岡か…まぁいい」
それぞれ皆初戦の相手が決まり、対面を果たす。
「皆、相手は決まったようだな! それでは早速順番を」
「あの煉獄さん」
「ん? なんだ胡蝶」
「私やっぱり棄権します」
「ぬ!?」
その中でにこにこと笑顔で挙手しながら、二度目の棄権を申し出たのはしのぶだった。
「だって相手は悲鳴嶼さんですし。前回の腕相撲の一位と最下位の私とじゃ、やる前から結果は見えてるでしょう?」
笑顔で挙手したまま告げるしのぶに、確かに一理あると周りは口を閉ざす。
しかし一人納得のいかない杏寿郎は、ううむと腕組みをして頸を倒した。
「しかしだな、一人が棄権すると人数合わせが…」
「いいじゃないですか。悲鳴嶼さんの不戦勝で」
「それでは競い合う意味がなくなってしまう!」
「別に私は競い合いたい訳では…」
「よし! ならばこうしよう!!」
名案とばかりにパッと顔を上げた杏寿郎が、一歩前に進み出る。
「今回の手押し相撲大会で見事優勝を得た者には褒美を出す!」
「褒美ィ? なんだそりゃ」
「わっ美味しい食べ物だといいな…!」
「うむ! 誰もが望んだものを勝ち取れるように、優勝者には希望のものを一つ贈呈することとしよう!」
「…なんでもいいんですか? それ」
「ああ! 胡蝶が優勝した暁には、君が欲しいものをなんでも一つ捧げよう!」