第9章 柱たちと年末年始✔
「今回は蛍少女も交えた競技! 相手は女子(おなご)でも鬼だ! 柱が負けては面子が立たないぞ!」
「誰が負けるってんだ、ァあ?」
その誘い文句に反応したのは実弥だけではなかった。
「それは俺も聞き捨てならないかも…」
「鬼子に負けるなど…嗚呼、哀れ…」
「ンなこと言われたら派手におっ始めるしかねぇよなぁ」
「公認であいつを沈められるという訳か…それなら話は別だ」
「手押し相撲! 楽しそうねっ」
「わぁ、皆さん凄いやる気ですねぇ。冨岡さん以外」
「……」
元々競争し合うのは嫌いではない集団なのか。
数名を除いて各々がやる気を見せる中、蛍は火照った顔を片手で仰ぎながらぼんやりとアルコールの回った頭で周りを見つめていた。
「(なんだろう、柱って…)へんなとこ、だんけつたかい…」
前もって用意していたのか、杏寿郎が差し出す拳の中には細い紙縒(こより)が何本も覗いている。
「ではまずは組み合わせ決めだな! 腕相撲の時と同様、平等にくじで決める! 同じ色を引いた者同士が初戦の相手だ。さぁ皆、好きなものを選べ!」
「さ、蛍ちゃんもっ」
「わっ」
軽々と蜜璃に抱き上げられて、杏寿郎の拳の前へと誘われる。
断れるような雰囲気は到底なく、渋々と蛍も目の前の紙縒を一つ掴んだ。
「ド派手にやり合えりゃ俺は誰でもいいけどな」
「南無阿弥陀仏…運もまた実力のうちだ…」
「冨岡さんも選んで下さい。一人だけ不参加なんて狡いですからね」
「…はぁ」
「うふふ、なんだかこういうのってわくわくするわ」
「彩千代蛍こい…彩千代蛍こい…」
「そいつは俺の得物だ伊黒ォ」
「これ、残ってる最後の一本は?」
「余った一本は俺の分だ。では皆一斉に引くぞ。それ一、二、三!」
杏寿郎の掛け声と共に一斉に引かれる紙縒。
すっと引き抜いた蛍の紙縒の先は、明るい蜜柑色 (みかんいろ)に染まっていた。
辺りを見ればすぐに同じ色の紙縒を見つける。
持ち主を辿れば、同じく蛍の紙縒の色を見つけたのだろう。ニィと挑発的に笑う顔と目が合った。