第9章 柱たちと年末年始✔
「西洋の酒だァ?」
奪い取るようにワインの瓶を掴むと己のグラスへと注ぎ込む。
「そこからまず怪しいんだよッ」
「あ、おい待て不死川」
「絶対に変なもんが混じってんブフッ!」
「あー言わんこっちゃねぇ」
勢い良く酒を煽ったかと思えば勢い良く吹き出す。
予想していた通りの反応に、呆れ気味に天元は溜息をついた。
「辛口フルボディだからな。慣れてなけりゃ一気飲みは自殺行為だぞ」
「ぐ…テメェはまず日本語を喋りやがれ…」
重厚感あるワインの刺激に、一瞬くらりと頭が揺れた。
それでも尚グラスを持つ手を離さない実弥に、天元の表情も面白そうに変わる。
「ま、これでわかっただろ。血なんて入ってねぇし、そんな悪趣味なもん俺が飲むかよ。わかったらお前も飲め飲め。折角の祭りだ」
「西洋被れの安い酒なんざ誰が」
「蛍は飲めるのにお前は飲めねぇってか」
「注げコラ」
喧嘩っ早く人の意見を聞かない男だが、その闘争心に火を付ければ話は早い。
グラスを机に叩き付けるようにして催促する実弥の目は据わっている。
「よしきたドンと飲め(チョロいな)」
内心腹黒い笑顔を浮かべながら、それでも酒の場が盛り上がるのは天元の望むところ。
「悲鳴嶼さんもどうだ? 一年に一度くらいは羽目外しても罰は当たらねぇからな。飲んでくれ!」
「西洋の酒か…興味はある。頂こう」
「大人ってなんですぐお酒に走るのかな…」
「時透はまだ十四だもんな。餓鬼にゃこの美味さはまだわかんねぇよ」
無一郎の他にしのぶや蜜璃も未成年となるが、柱は成人している者の方が多い。
その中で唯一酒を口にしていない男を、忍者の目は目敏く見つけ出していた。
「よぉ冨岡。お前も飲めよ、まさか下戸じゃねぇだろ?」
「俺はいい」
「またつれねぇこと言うな。だが今日はつき合って貰うぜ。参加者はその場の祭りに興じること! それが柱会の鉄則だ!」
黙り込む義勇の前にも問答無用で酒のグラスが差し出される。
そうこうしていれば、すっかり狭い檻の中は酒の匂いで充満した。