第9章 柱たちと年末年始✔
「酒を肴に酒を飲め! 何もないより楽しめるだろっ!」
「うん」
好きな酒の趣味が合ったことが余程嬉しかったのか。ドカリと蜜璃の隣に腰を下ろして、天元は蛍に酒を注ぎ始めた。
蛍もまた同じものを口にできるのが嬉しかったのか、否定もしない。
となれば辿る道は一つ。
「そ、そんなに飲ませて大丈夫?」
「蛍が飲むっつってんだからいいだろ? 飲みの席でンな野暮なこと言うなよ」
ちびちびとだがワインを摂取していく蛍の顔が、ほんのりと赤らみ始める。
心配そうに伺う蜜璃に、天元は気にした様子もなくけろりと笑った。
「むぅ…しかしだな、今の蛍少女は子供だぞ。酒を飲ませるなど…」
「見た目の話だろそりゃ。じゃあこんな幼女に卑しい気持ちを抱くお前はど」
「ぅゴッホン!!」
「やま…しい?…そうなの? 煉獄さん」
「違うぞ甘露寺!!!! ただの宇髄の戯言だッ!!!!!」
「うるっさ…声がいつも以上にでけぇ」
ビリビリと狭い檻内に響く杏寿郎の否定。
しかし幸か不幸か、ワインを飲み続ける蛍の耳に天元の指摘は届いていないようだった。
「まぁ、興味深いですね。鬼でも西洋の酒なら摂取できるんですか」
「鬼が酒を飲むなど、そんな話は俺は聞いたことがないが」
「あの鬼が特殊なんじゃないのかな? お館様もそんなことを言っていたし」
「その話こそ興味深いな…教えてくれるか、時透」
蛍の姿に他柱達の興味も注がれる。
しのぶのように興味を持つ者もいれば、小芭内のように驚く者もいる。
再び沈黙を貫く義勇以外、個々に反応を示す彼らの中で、唯一気に喰わない顔をしている者が一人いた。
「どうせ血でも混ぜた酒なんだろォが。俺は認めねェ」
悪態を付くように舌打ちをしたのは、ギラつく目をした不死川実弥だ。