第9章 柱たちと年末年始✔
「そうよ。お館様が決めたでしょ? 蛍ちゃんが柱のお家でお風呂に入ったり、お泊まり会をしたりするのは禁止だって」
ああうん、それは知ってるけど…え?
「それって…」
その意味を辿れば、此処で柱会をする理由は一つしかない。
でもまさかと思う気持ちが強くて、言葉にできずに杏寿郎と蜜璃ちゃんの顔を交互に見た。
それって…まさか。
「お前を参加させるには此処でやる他ないだろ。気付けよそれくらい」
相変わらずカチンとくる言い方。
なのに天元のその言葉に、ちっとも嫌な気はしなかった。
つまりは私を参加させる前提で組み込んでくれた柱会だからであって。
お館様の禁止事項に引っ掛かからないように、配慮してくれたんだ。
…ついでに私も誘ってみようなんて、軽い感じじゃなかったんだ。
「……」
なんだか上手く言葉にできない。
腕相撲大会は正直参加したくないけど、柱だけの親睦会に私を入れることを前提として考えてくれていた、杏寿郎や蜜璃ちゃんの優しさに。
「黙り込んでどうした蛍少女! 黙って事を進めたことを怒っているなら」
「待て待て煉獄」
「むっ?」
「今ぶっ込むのは野暮だ。そっとしとけ」
「しかし怒らせてしまったのなら」
「そういうところがお前は女知恵浅いんだよ」
「む…」
こそこそと杏寿郎に耳打ちしていた天元が、ニッと口角を上げて笑う。
「ほら来いよ。此処の宿主はお前だろ」
屈託無い、奥さん達に向ける時のような裏のない笑顔。
「お前がいなきゃ参加しねぇって奴が最低二人はいるからな。いなきゃ困るんだよ。煉獄が」
「…むぅ」
唐突に振られて、ぎこちなくも杏寿郎も頷く。
一人は不死川実弥だってわかってるけど、もう一人は誰だろう…?
気にはなったけど、でも問うことはしなかった。
誘うように手を差し出す天元に、今、応えない理由はなかったから。