第37章 遊郭へ
「俺は善逸も宇髄さんの奥さん達も…勿論蛍も皆、生きていると思う。そのつもりで行動する。必ず助け出す」
天元はああ言い切ったが、それでも炭治郎は諦める気など露にもなかった。
雛鶴達のことは詳しく知らないが、善逸と蛍のことなら知っている。
善逸は普段は気弱でも、ここぞという時は守るべきものの為に命を張れる男だ。
更に蛍は、無限列車の任務でその実力を目の当たりにした。
鬼だからこそ扱える血鬼術で、刀を扱う鬼殺隊にはできない戦闘術を持つ。その力は柱に引けを取らない。
そんな二人が鬼に不意を突かれることはあっても、命まで奪われることは易々とはないはずだ。
「伊之助にもそのつもりで行動して欲しい。そして絶対に死なないで欲しい」
彼らを信じろ。生きていると。
己を信じろ。生きているはずだと。
そして己の命も守り抜け。
「それでいいか?」
問いかける炭治郎は強い顔をしていた。
問いかけてはいても、それは疑問詞ではない。
「お前が言ったことは全部な、」
だからこそ伊之助も負けじと強い瞳のまま口角を上げた。
言われずともわかっているのだ。
「今オレが言おうとしてたことだぜ!!」
伊之助の笑みを受けて、炭治郎の胸の隅にあるざわめきが確かな温かさに変わっていく。
静かに息を整えると、伊之助越しの花街を見据えた。
——大丈夫だ。皆、生きている。