第9章 柱たちと年末年始✔
そんな儚い願いも束の間。
「こんばんは。あら、もう皆さんお揃いで?」
程無くして、にこにこといつもの優しげな笑みを浮かべた胡蝶が暗い通路の奥から姿を現した。
立派なお鍋をその手に持って。
ああわかった。此処でお鍋をするんだね。
大人数で一斉に食べられるもんね。
寒い時期には美味しいもんね。
…でも此処監獄だけど。
鬼を監禁する為の場所だけど。
間違っても炬燵でお鍋を囲う場所じゃないけど。
「……」
そんな私の心を唯一代弁したような表情をしてくれたのが、最後の最後に現れた義勇さんだった。
胡蝶の後に続く表情は…困惑、に近い感じ。
なんで此処にいる?って顔で、柱達を凝視してる。
うん、わかる。
「おお、全員揃ったな! よもや柱会で皆の顔が見られるとは!!」
「…煉獄」
「うむ! 参加してくれて嬉しいぞ冨岡!」
「此処で何をしてる」
「何、とは。年に一度の柱会だが? 通達は行かなかったのか?」
「それは知っている。だが此処でやるとは聞いてない」
「む? そうだったか? 場所はしかと鎹鴉に伝えたはずだが…」
「冨岡の鴉は高齢爺さんだからな。穴でもあったんじゃねぇの?」
胡蝶から受け取ったお鍋を早速机で準備している天元が、ずばり痛いところを突いてくる。
た、確かに…あのお爺さん鴉なら、伝言漏れがあっても可笑しくなさそう…。
天元の指摘に義勇さんは眉を潜めたものの、何も言わずに目線を…あ。目が合ってしまった。
「お前は聞いていたのか」
まさか。
義勇さんの問いにぶんぶんと頸を横に振れば、見るからに溜息をつかれた。