第9章 柱たちと年末年始✔
「わ、私その腕相撲大会棄権しま」
「認める訳ねぇだろォ」
…うわ。
はいっと挙手して棄権宣言しようとした言葉は遮られた。
寒気のするような低音の声に。
恐る恐る檻の外に目を向ける。
「公認でテメェの腕をへし折れるとはなァ。煉獄もまともなこと考えやがる」
バキボキと大袈裟なまでに音を立てて、拳を握り合わせているおっかな柱が其処にいた。
狂気的な笑みを浮かべて。
うわあ予想通り過ぎる反応キタコレ…!
そして考えたのは杏寿郎じゃなく蜜璃ちゃんね!
「よくぞ来てくれた不死川! さあ入れ!」
いや歓迎しないで杏寿郎!
腕へし折るって言ってたよ! 聞いてた!?
「後はしのぶちゃんと冨岡さんと悲鳴嶼さんと…」
「悲鳴嶼の旦那、忘れてねぇだろうな…」
「忘れてなどいない」
「あ、悲鳴嶼さん! こんばんはっ」
まさかのおっかな柱の登場に驚きを隠せないままでいると、立て続けに姿を見せたのは柱一の巨体の持ち主。
両手を合掌させたまま、なんだか大きな袋を担いでいる岩柱の悲鳴嶼行冥だった。
何、あの荷物…。
「必要なものは全て揃えてある」
「酒は?」
「無論」
「おっし、流石悲鳴嶼さん!」
頷く岩柱に、途端に天元が歓喜の表情を見せる。
悲鳴嶼行冥が持ってきた袋の中には、お酒の瓶と野菜とお肉と…何この食材。
あ、柱会という名の腕相撲大会という名の忘年会だからか。
…この檻の中で食事する気なの?
「道中これも拾っておいた」
「悲鳴嶼さん…俺を荷物みたいに言うの止めてくれませんか」
ひょいと軽々悲鳴嶼行冥が摘み上げたのは、小柄な少年の背中の衣服。
無表情だけど何処か拗ねた姿を見せている、霞柱の時透くんだった。
おっかな柱の次に来ないだろうと思ってたのに、まさか拾われて来るとは…。
基本無気力そうだから、運ばれることには抗わなかったのかな…。
「じゃあ残るはしのぶちゃんと冨岡さんねっ」
指折り数えて楽しげに言う密璃ちゃんに、せめて二人は来ることなかれと内心両手を合わせて願う。
既にパンパンだけど、檻の中。
巨体の岩柱と音柱がいるだけで定員越えてるから。
胡蝶は小柄だから入りそうだけど、義勇さんを入らないからって省いたりしたら駄目だからねまた苛めの構図になるからねそれ。