第9章 柱たちと年末年始✔
この季節だから職場の忘年会しましょう的なノリ?
鬼を狩ってる組織で?
…平和だな。
「はい」
「なんだ」
杏寿郎達がしようとしてることはわかった。
だけどまだ疑問が一つ。
挙手すれば、慣れた様子で伊黒先生が先を促してくる。
「なんでその柱会を此処でするの?」
その理由がわかりません。
「私は柱じゃないから不要なんじゃ…」
「無論、理由はある!」
そうなの?
人数の所為か炬燵のお陰か。ほんのりと温度が上がった檻内で、杏寿郎が腕組みをしたまま炬燵の前に腰を下ろした。
「近年、柱会への集まりが悪くてな。毎年皆に呼び掛けているのだが、全員が集まったことはついぞない」
あー…なんかわかる。
あんな個々で個性強い人達が団結するなんて、一様に慕ってるお館様の一声がなきゃ無理そうな気がする。
特に不死川実弥と時透くん辺り。
…義勇さんもそうかな。
「場所や食事もそれなりに考えているのだが、中々参加者が集わず終い。よって問題は場所や食事ではないと思い至った」
「はぁ…」
なんだか杏寿郎が、問題児だらけの部下を抱えた上司みたいに見えてきた…。
一応鬼殺隊も職場だもんね。鬼を狩るっていう職務内容が特殊なだけで。
ご苦労様です。
「その問題を解決してくれたのが甘露寺だ。礼を言う!」
「そ、そんな…っ私は皆で楽しく親睦会ができたらいいなって思っただけだから…っ」
頭を下げる杏寿郎に、顔を赤らめた蜜璃ちゃんがぱたぱたと両手を横に振る。
蜜璃ちゃんが考えた案って…あれ、なんか嫌な予感がする。
「あのね、前に話したでしょ?」
「…何を?」
なんでその眩い笑顔を私に向けてくるんだろう。
嫌な予感がする。
「蛍ちゃんを交えた腕相撲大会、したら楽しいんじゃないかってっ」
「…えええ…」
楽しい、とは言ってなかった気が。
してみたらどうかなって提案だけしてくれた気が。
それが現実化したのうわあ嫌だ。
「いつもは即答で断りを入れる不死川が乗ってくれてな! 蛍少女のお陰だ!」
「えええええ」
絶対殺人鬼みたいな顔してたでしょそのおっかな柱。
あわよくば大会に紛れて私の頸を折る算段でも立ててるんじゃないそのおっかな柱。
嫌だ。参加したくない。