第9章 柱たちと年末年始✔
「邪魔するぞ」
「あ! 伊黒さん、こんばんはっ」
疑問符ばかりを浮かべていれば、遅れて伊黒先生が姿を見せた。
その手には黒光りする壺のような物を抱えている。あれが天元が「肝心の」って言っていた物?
大きな口を開けた壺状の陶磁器の中には沢山の灰が詰まって…あれ?
なんだか見覚えあるような。
剥き出しの床を敷き詰める畳。
中心に置かれる木箱の中に、伊黒先生が持ってきた黒い壺を置く。
その上に杏寿郎が持ってきた大きな卓上机が乗せられて、布団を挟んで更にもう一枚の卓上板を…やっぱり。
私の家にはなかったけど、欲しかったものだから知っていた。
真冬の家で重宝するもの。
あれは、
「炬燵(こたつ)…?」
「そうだ!」
思わず呟けば、横で杏寿郎が正解とばかりに声を張った。
やっぱり。
その証拠に、伊黒先生が持ってきた黒い壺は暖を取る為の火鉢だった。
「私達蛍ちゃんのことばかり見ていて、住まわせてる所は見てなかったから…ごめんね。これなら少しは温かくなるでしょ?」
申し訳無さそうに呼び掛けてくる蜜璃ちゃんに、ようやく理解した。
昨日は杏寿郎も此処で過ごしたから。
底冷えする冬の寒さを目の当たりにしたんだろう。
確かに薄い布団だけじゃ暖は取れないけど、生憎鬼である私は凍死したりする心配はない。
それにこの檻の中は仕方のないものとして、受け入れているから。
そう杏寿郎にも話したはずだ。
「いいよ、そんな気遣いしてくれなくても…私は鬼だから当然の」
「それは違うぞ、蛍少女」
違う?って何が?
言葉を遮って、目の前の簡易炬燵を見据えた杏寿郎が腕組みをしたまま胸を張る。
「これは俺達柱の為だ。よって蛍少女一人の為ではない!」
「…へ?」
柱の為?
…どゆこと?
「柱会をするのに、居心地の良い空間を作らねば人が集まらないからな。その為のものだ」
「ち、ちょっと待って」
今知らない単語を聞いた。
柱会?って何?
初耳だけど。
「何、柱会って」
「あー、そりゃ煉獄が勝手に命名してるだけだ」
「私達柱の間で行う親睦会のようなものよ」
親睦会?
えちょっと待って何それ。