第37章 遊郭へ
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「いやぁこりゃまた…不細工な子達だね…」
おかめ化粧を塗りたくり、見様見真似の女者の着物を着せた炭治郎・善逸・伊之助。
以前に天元が千寿郎と蛍にそうしたように、正におぼこのような姿でときと屋の玄関に立っていた。
「ちょっとうちでは…先日も新しい子が入ったばかりだし、悪いけど」
禿としてどうかと天元が三人を引き連れ売り込みに行けば、最初から良い顔はされない。
どこからどう見ても醜女(しこめ)のような三人娘に、ときと屋の女将も難色を示した。
「ほら見ろ」と言わんばかりの善逸の視線を無視して、天元がゆるりと溜息をつく。
「そうかぃ…そりゃあ残念だ」
憂いを帯びるような視線が地面へと落ち、肩を落とす。
どこかほのかな色気を感じさせる着流し姿の天元に、答えを渋っていた女将の頬が自然と染まる。
「ま、まぁ。一人くらいならいいけど」
「本当かい?」
空気が一瞬で変わったのは、その時だ。
「そうねぇ。その真ん中の素直そうな子なら、使えそうだし」
「じゃあ一人でいい、頼むわ。悪ィな奥さん」
「あらやだ奥さんなんて」
申し訳なさそうに告げながら、天元が切れ目を細めて柔く笑う。
つられるように袖で口元を隠しながら照れ臭そうに笑う女将を、隣で見ていた旦那は思わず目を剥いた。
最初に見せた難色は一体何処へ行ったのか。開いた口が塞がらないとはこのことだ。
「おい、お前…」
「いいじゃないか、あんた。二束三文で売ってくれるんだし。雑用でも十分使えれば利益になるさ」
「はは。さっぱりしていて気持ちの良い奥さんだな。なぁ炭子」
「はい! 一生懸命働きます!」
炭子(すみこ)とは、取って付けたような炭治郎の偽名だ。
ぽんと頭に手を置く天元に、ぴんと背筋を伸ばして精一杯裏声を出しながら会釈する。
一番最初に売れたのは、厚い化粧の下からでも性格が滲み出ている炭治郎だった。