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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第36章 鬼喰い



「予備の血が尽きてしまって。丁度補充したかったんです」

「俺はテメェの都合良い栄養剤かァ」

「まぁ。稀血は他の血より少なくて済みますから。それで済むならぜひ」

「肯定すんじゃねェよコラ」


 蛍が血を分けてもらえるのは基本的に柱のみ。その条件は変わっていない。
 それでも何より実弥から配給を望む理由は、そこにあった。

 稀血であれば、一般的な血液より取り込む量は格段に減る。
 特に強烈な風柱の稀血なら、一滴で常人の何十人分もの血液効果があるのだ。


「割と限界なんです。頂けませんか」


 口調は淡々と変わらないものだが、催促する蛍の手は微動だにしない。
 実弥が噛み付こうとも敵意を向けようとも、一歩も退く様子がない。
 蛍の血液事情など知らないが、本当に限界なのかもしれない。
 荒々しく舌打ちをすると、仕方なしにと実弥も木陰へと身を進めた。


「ったく。この地区が俺だったことに感謝しろよ」

「勿論。心から感謝してますありがとう御座います」

「つかなんだその薄ら寒ィ丁寧語はァ。やめろ気色悪ィ」

「でも相手は柱様なので…」

「取って付けた様なんざ虫唾が走るわヤメロ」


 言葉通りにサブイボを立てて一喝。
 大人しく黙り込む蛍の隣で腰を下ろすと、胡坐を掻く。
 鼻を掠める異臭に、同じく腰を下ろす蛍を凝視した。


「テメェ臭うぞ。何日駆けずり回ったァ」

「え…そう、ですか?」


 柱とて何日も飲まず食わずで鬼殺を行うことはよくある。
 その分、体に不快な臭いを染み込ませることだって珍しいことではない。
 しかし蛍の傍から漂うのはただの悪臭ではない。
 血と泥が腐り混じったような臭いに、どれだけ戦前に浸っていたのかと隠すことなく顔を顰めた。

 人間の常識を超えた域で、鬼殺を延々と行っていたのだろう。
 だからこそこの短期間で、悪鬼共に"鬼喰い"と呼ばれるまでに至ったのだ。

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