第8章 むすんで ひらいて✔
じっと見ていれば、吸い込まれそうな瞳はないのに自然と距離が縮んだ。
鬼であることを想像させない、静かな寝顔だ。
頬に影を落とす長い睫毛。
陽の光から遠ざかった白い肌。
肌触りの良い、甘露寺とは正反対の色合いの暗い髪。
ふっくらと色付いた柔らかな曲線の唇。
何処か浮世離れしているような姿をしているのに、それは"鬼"という印象ではない。
なのに何故か惹き付けられてやまない。
白い肌で映えるその色に誘われでもしたのか。
気付けば縮めた距離は、簡単に間を埋め尽くし──
「……ふ…」
吐息が触れる。
俺の唇に。
瞬間、驚きで顔を退いていた。
「っ…!」
確かな感触はなかった。
それでも確かに、刹那に触れてしまった。
その、唇に。