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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第34章 無題



「やはりお前は鬼になれ杏寿郎…ッ!」


 わなわなと震える猗窩座の口が歓喜する。


「俺と永遠に戦い続けよう!!!」


 激しい攻防戦の中で膝をつかなかった猗窩座が、初めて自ら片足を折った。
 今までの威力とは段違いの、それだけのものがくることを体全体で悟ったが故だ。

 片膝をつき、腰を低く、両腕を突き出すように構える。
 同時に猗窩座の足元が不気味に青白い光を放った。

 反して杏寿郎は両の足をしかと地につけたまま、唯一覗く隻眼でただ猗窩座を見ていた。
 足元から放つ青白い光は、猗窩座の術式展開だ。


(…心を燃やせ)


 駒澤村の上空での一戦。
 上弦の弐である童磨と対峙した時以上に、心を叩き上げる。

 今隣に、力強い風を纏う仲間はいない。
 片目を失い、あばらを砕き、内臓を潰した己しかいないのだ。


(限界を超えろ)


 しかしそれは今ここで退く理由にはならない。

 負傷して動けない二百人もの一般市民。
 これからを走り抜けていくであろう、未だ未熟で若い戦士達。

 そして。


「…ッ」


 声に出さずともわかる。
 この背で守る、蛍の存在。

 それらが杏寿郎をこの場に縫い付ける理由となっている訳ではない。
 それこそが、杏寿郎の背を押す者達なのだ。


(俺は炎柱)


 熱く鼓動を打ち鳴らす。
 呼吸で体の内側から叩きに叩いて上げた炎が、燃やした心の臓から四肢へと広がっていく。

 心を、体を、意志を。
 それが──


「煉獄杏寿郎ッ!!!」


 己で在ると咆哮する。


 〝玖ノ型──煉獄〟


 奥義を放つと同時に、踏み込んだ足が地を抉る。
 赤々と噴射する炎の飛沫を上げて、杏寿郎の体は閃光のように飛んだ。

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