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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第34章 無題



「君はもう無理せず、ゆっくり体を休めろ」

「…はい…」


 柱である杏寿郎が休めと言える程ならば、悪鬼の脅威は去ったのだろう。
 自分は魘夢の頸を斬ることができた。
 乗客も怪我人は出たが誰も命を落としていない。

 上々たる結果だ。
 ようやく炭治郎の顔にも、ほっと安堵の笑みが浮かんだ。


「だが一人、安否が未確認の者がいる」

「え?」


 それも束の間。
 続く杏寿郎の言葉に、炭治郎の笑顔が止まる。


「蛍が傍についているから命を落としていることはないだろうが、場所が場所なだけに急ぎ確認が必要だ」

「どういう、ことですか…?」

「一人、少女が走行中の列車から転落した」

「え…っ」

「蛍が助けに入った為、事故死はしていないだろう。だが二人を荒野の中に置き去りにしている状態だ。これだけ大規模な騒動があれば、血の臭いを嗅ぎつけた新たな鬼が現れないとも限らない。早急に安否の確認をする必要がある」


 鎹鴉の要は、この大事故の救助に当たる為の鬼殺隊士を呼ぶ為の任に就かせた。
 すぐには戻ってこれないだろう。

 つかず離れず蛍を監視するように見守っている政宗は、蛍の傍にいるのか。それとも脱線事故に惑わされているのか、姿を見ない。

 反して、蛍の血鬼術である朔ノ夜は視認できる傍にいる。
 遠隔で自我を持つように行動できることは大いな力だが、それが今は逆効果となっていた。
 つまり蛍自身は、今は大きな力を使えない。
 その状態で新たな悪鬼に会えば、無力な少女を守りながら戦えるのか。


「故に俺が出向く」


 鎹鴉よりも速く行動できるのは、この場では杏寿郎のみ。
 大規模な戦闘。疲弊している剣士達。救助が必要な人間が数百単位でいる。
 そんな現状で散り散りでいることは危険を招くことを杏寿郎は知っていた。


「だったら、俺も…っ」

「その体では足手纏いになる。君はこの場に残れ」


 炭治郎の言葉を皆まで聞くことなく、杏寿郎は静かに現実を告げた。

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