第8章 むすんで ひらいて✔
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義勇さんに強制休日を言い渡されて一日目。
「本当に丸一日休んでしまった…」
「……」
「ねぇどう思う? 本当に明日も義勇さん来ないのかな?」
「……」
「ねぇ」
「……」
布団の上で膝を抱いて丸くなったまま、巣箱に停まっている鴉に声をかける。
なのにまるで無反応。
聞こえているはずだけど無視され続けていた。
丸一日。
義勇さんに休みを余儀なくされて過ぎた時間はたった一日だけ。
なのに最近は何もしない日なんて一日もなかったから、その時間を私は完全に持て余していた。
「何もしていないと落ち着かないんだけどなぁ…」
溜息と共に鴉に向かって愚痴を零す。
最初こそ呼吸法の復習をしたり基礎運動をしたりしていたけど、狭い檻の中じゃ限度がある。
義勇さんにも、短期集中の訓練が大事なこともあるって言われたし。
…わかって、いるんだけどな…。
『お前は最近、生き急ぎ過ぎだ』
なんだか見透かされた気がした。
必死になっている自分に、諭された気がした。
わかってはいたんだ。
これでいいのかなんて自問自答したりもした。
でも何もしないよりは何かしていないと一歩も進めないような気がして。
私には時間がないから。
「…どうなるんだろ…」
でもその先にある結果もよく見えていない。
もしこのままお館様の期待に応えられなかったら私はどうなるんだろう。
柱達に私の存在を否定されたら、不死川実弥が言っていたように私は処刑されるんだろうか。
前は死も受け入れていたはずなのに。
最近は、その先を想像するのがちょっと怖い。
現実味を帯びてきたからなのかな…よくわからないけど。
「私がいなくなれば君の仕事も減るんだろうね」
この狭い檻の中で無言を貫いてしまえば、どんどん気分が落ちていく気がする。
だからなんとなく興味を惹いていた鴉へと、持て余した時間を向けた。
義勇さん達の鎹鴉と同じに喋られるかはわからないけど、今の私には丁度良い話し相手だ。
専ら相手は聞き役だけど。
「こんな檻の傍での生活を強いられるなら、減った方がいいのかな」
鴉だって好んで鬼の傍にはいたくないだろうし。
自嘲気味に笑えばビシビシと強い視線が向く。
あの鴉、全く喋らないけど眼力は強い気がする。