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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第33章 うつつ夢列車



「朔…! 禰豆子はっ?」

「竈門妹なら、黄色い少年と共に車両を三両、守ってくれている」

「黄色い…あ、善逸? 起きたの?」

「黄色い少年の意識はまだ不明だが、すぐに動き出せるだろう。雷の呼吸の初動を感じた」

「そうなの? じゃあ炭治郎と」

「猪頭少年だな。二人には悪鬼の頸を斬る任務についてもらった。これだけ大勢の乗客が人質に取られているような状態では、少年達だけでは守りきれない」


 蛍の一歩先を行くように、すらすらと答えていく。
 杏寿郎のその姿は既に鬼殺隊のものとなっていた。
 戦場での判断・決断力の速さは、蛍自身がこの目で見てきたものだ。


「故に君の血鬼術(ちから)が必要だ。蛍。朔ノ夜と共に協力してくれ」

「は、はいっ」


 抱擁とはまた違う、強い力で期待と共に肩を掴まれる。
 自然と背筋を伸ばしながら、蛍は頷いた。


「でも炭治郎と伊之助だけで、魘夢の頸を取ることなんて…」

「それが悪鬼の名か?」

「あ、うん」

「談判したのか」

「したけど…駄目だった。あの鬼に人間の常識は通じない」

「話はしたんだな」

「うん」

「それで、蛍は竈門少年達では頸を取れない程の強い鬼だと判断したのか?」

「それは…」


 炭治郎が魘夢と対峙している様は、この目で見た。
 列車と融合した後だったが、それでも魘夢の隙を突いた炭治郎の黒い刃が頸を斬ったのは確かだ。


「ううん。そんなことはないと思う」

「うむ。俺もそう判断した。これだけ強い鬼の気配が充満していれば、どれ程の相手か凡そわかる。竈門少年達も立派な剣士だ。相手にならないことはない」

「うん。ただ、魘夢は下弦の壱。瞳にその名称が刻まれているのを見たの」

「やはり下弦の位か…。では蛍、次は君だ」

「え?」

「朔ノ夜がいれば、この列車全てを影で覆うことは可能か?」

「多分…魘夢が融合している列車だから、抑えられるかはわからないけど…」

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