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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第33章 うつつ夢列車



「この列車には少なくとも百人単位の乗客が乗ってる。もしその全員を眠らせることができていたなら…鬼は相当な腕を持つ。炭治郎一人じゃ危険だから、私も手助けに行く」

「ムゥ…!」

「うん。わかってるよ。禰豆子が誰より炭治郎の助けになりたいのは。ただこの場には禰豆子の能力(ちから)が必要なの。禰豆子の炎は、人間には無害で鬼だけに力を発揮するって聞いたよ。私にはない、すごい才能だと思う。その力があれば善逸達を傷付けずに起こすことができるかもしれない」

「…む…」

「禰豆子にしかできないことだから。お願い」


 握っていた小さな手を、両手でそっと握り直す。
 祈るように願いを告げる蛍の目が、一度車両へと向く。


「心配するよね。禰豆子にとって炭治郎は誰より大切な家族だから。私もそう。師範を…杏寿郎を、此処に残していくことが正直怖い。任務中に眠りに落ちるなんて今までなかったことだから。杏寿郎に限ってそんなこと簡単にはないと思うけど、いつ命を落としても可笑しくない戦場だから。私が傍にいたい。守っていたい」


 噛み締め、告げる。
 蛍の眉間には皺を刻み、不安しかないと言える表情で、眠り続ける杏寿郎を見つめていた。


「だからこそ命取りになるような闇雲な対処よりも、少しでも可能性がある方を選ぶ。あの少年少女達が他人の夢に入り込んでいたってことは、害を成せるのがその方法だってことだ。それなら潜り込むのは危険。禰豆子みたいに、外部から接触できる方が解決策になるかもしれない」

「ムフぅ?」

「私の能力だと下手に干渉してしまうかもしれないから、ね。禰豆子ならその危険性も低くなる。誰より今一番危険な善逸達を、守ってあげて」


 車両の明かりに照らされ伸びる蛍の足場の影から、ずるりと姿を現した朔ノ夜。
 初めて見る影の金魚に禰豆子は一瞬身を退いたが、朔ノ夜の口から「こぽん」と場違いのような気泡が鳴る声を聞いて、きょとんと目が丸くなる。


「朔ノ夜っていうの。私の中で一番力のある子。杏寿郎達には干渉させられないけど、禰豆子の助けにならなると思う」

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