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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第33章 うつつ夢列車



 先に腰を上げた姉が、手を差し出す。
 その手を握り見上げれば、庭を照らす陽光が反射して姉の背中を温めていた。
 体の縁(ふち)が陽光で真白に輝く。
 まるで姉自身が発光しているような出で立ちで、笑うその様に。


(…眩しいなぁ)


 つい目を細めてしまうのだ。




















「杏寿郎、これ槇寿郎さんの御膳で」

「俺が持つ! 蛍は指示だけでいいんだぞ」

「うん。でもそれくらいならどうってことないから」

「だが」

「大丈夫。少しくらい体を動かした方が、良い運動になるし」

「…しかし…」

「…あの、ね。杏寿郎」

「む?」

「ただ、最近肩凝りが酷くて…代わりに、後で肩を揉んでくれたりしたら嬉しいかなぁって…」

「肩揉みか?」

「うん。肩揉み。千くんとのお稽古が終わった後でもいいから」

「いや、朝餉と稽古事の間ならば時間はある。肩揉みだな、任せろ!」

「そ…そう?」










「っくしゅん!」

「風邪か?」

「ううん。ちょっと」

「寒いのか」

「いや鼻が」

「花粉症か」

「多分違」

「ならば風邪か!」

「ただのくしゃみです。問いが一周してるよ」

「ううむ…君の体温は高めだからな…平熱でもわかり難い時がある」

「まぁ以前より高めにはなったけど…あ。」

「む?」

「じゃあ杏寿郎、一緒にお昼寝でもしませんか」

「昼寝、か?」

「うん。今日はもう何も用事はないでしょ? 私も洗濯物の山を一つ片付けたら、なんだか眠たくなってきて。杏寿郎が一緒に添い寝してくれたら、いつもよりぐっすり眠れる気がする」

「……」

「都合悪い?」

「ああ、いや。そんなことはない。…前に蛍と千寿郎と、虫干しの最中に寝てしまったことを思い出しただけだ」

「ああ、あれね。気持ちよかったなぁ」

「うむ。…本当に心地良かった」

「杏寿郎もぐっすり眠れた?」

「ああ」

「じゃあ尚更。お昼寝、一緒にしよ」

「……」

「杏寿郎?」

「…うむ。君が誘ってくれるなら喜んで」

「本当? やった」

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