第33章 うつつ夢列車
目を丸くしながらも、妹の言う通りだと感心する。
そんな姉と顔を合わせて、くすりと同時に笑い出した。
広い煉獄家の屋敷に響く、女性同士の笑い声。
二人が来てくれてから家の中がとても明るくなったと、嬉しそうに告げてくれたのは千寿郎だった。
優しく、角のない姉の性格は杏寿郎とは違った意味で誰とでも気が合い、槇寿郎も穏やかな表情を見せることが多くなった。
唯一の家族が、大切に思う人達と共に生きていける。
そんなに幸せなことはないと心から思えた。
「はぁ…冷たくて美味しい。これなら幾つでも食べられる気がする」
「本当? それは嬉しいけれど、あんまり食べ過ぎるとお腹を冷やしちゃうわよ」
「んふふ」
「? なぁに、蛍ちゃん」
「そう言えば前に、杏寿郎と京都の屋形船に乗った時にね。アイスクリンをうまいうまいって言いながら二十個も平らげた杏寿郎のこと思い出して」
「二十個も?」
「短時間にあんなに食べて、平気な顔をしていられるのは杏寿郎だからだろうなぁって。感心しちゃった。鬼の私より頑丈だなって」
「杏寿郎くん、食に関しては人一倍強く大きな胃袋を持っているものねぇ」
「私も二十個食べられるかな」
「その挑戦は、ややこがいない時にしてみたらいいんじゃないかしら。今の蛍ちゃんは一日一個ね」
「ええー…もっと食べたい」
「はい、お水」
「ちぇ…」
「しんどいなら姉さんに凭れていてもいいから。それとも横になる? 布団を出しましょうか」
「…じゃあこっち」
「あらあら。どうぞ」
体重の増加した体を遠慮なく、姉に背中合わせで預ける。
肌が触れ合えば熱も感じるというのに、姉との触れ合いなら夏場であっても喜んで進み出た。
もう二度と触れ合えないものと思っていたのだ。
こうして体で姉の存在を感じられるだけで、泣きたくなる程に幸せだと感じる。
(二度と触れ合えないなんて。少し離れていただけで私も大分姉さん恋しくなってたんだなぁ)
鬼殺隊に入ってからは姉と離れて暮らしていた。
その間にこんなにも拗らせていたとは、と自分の思いについ苦笑してしまった。