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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第33章 うつつ夢列車



(燃えてる…)


 一体何が燃えているというのか。
 目を凝らして見ても、火の粉を巻き上げる炎は勢いを増しても正体は掴めない。

 肌を突き刺す熱気は、例え夢の中だとしても本物のようだ。
 夢と言っても、ここは精神世界。
 感じたものを心が認めてしまえば、体にどう影響するかわからない。
 必要以上の詮索は不要だと、少女は口元を袖で覆い歩き出した。

 目的を果たさなければ。

 どうにか歩けるスペースを見つけて、恐る恐ると進む。
 炎に近付かないようにしても無意識領域そのものが熱いのだ。
 そこばかりは回避のしようがない。


(この男、確か炎柱とか言ってたっけ…炎の呼吸の使い手だからこんな世界をしているの?)


 なんとも安直な考えだが、杏寿郎のことを深く知らない少女には考察もできない。
 今まで幾度か他人の無意識領域に踏み入れたことはあったが、こんな燃える世界は見たことがなかった。
 凡そ人など受け入れない容赦のない空気は、柱たる由縁か。

 それでも目的の為にと進み続けていれば、やがて一層赤く燃ゆる"それ"を見つけた。


「見つけた…精神の核!」


 丸い水晶玉のようなものが空中に浮かんでいる。
 きらきらと炎の反射により煌めくそれは、赤く半透明に光っていた。


(赤いのは初めて見た…)


 それこそが探し求めていた杏寿郎の精神の核。
 心の源である。

 見方によっては美しくも、また威圧あるものとしても感じられる不思議な核。
 魅入りながらも畏怖もする。
 恐る恐ると近付いた少女は、ぐっと歯を食い縛ると錐を再び構えた。


(でも精神の核は脆いから簡単に壊せる。ガラス細工のように)


 宙に浮かんではいるが、手を伸ばせば届く距離だ。
 その核目掛けて、少女は大きく錐を振りかぶった。

 ただ浮かんでいるだけの核は無防備の状態。
 例え相手が柱ともなる実力者でも、丸裸の心を差し出しているようなものだ。
 最初から勝敗のついている状態で、少女は決め手の一手を振り下ろした。


「っかは…!?」


 瞬間、喉を締め付けられるような感覚に呼吸が止まる。

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