第33章 うつつ夢列車
〝炎の呼吸を火の呼吸と呼んではならない〟
その詳細はヒノカミ神楽に繋がっているかもしれないと、しのぶから意見を貰い無限列車へと乗り込んだ。
「もし煉獄さんが知っている何かがあれば、教えてもらいたいと思って…」
「うむ! そういうことか! だが知らん!!」
「えぇっ」
「ヒノカミ神楽という言葉も初耳だ。君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが。この話はこれでおしまいだな!」
「えっ!? あの、ちょっともう少し…!」
「俺の継子になるといい! 面倒を見てやろう!」
「待って下さい! そしてどこを見てるんですか!?」
(わあ。一刀両断)
知らないものは知らない。その一点張りを笑顔で告げる杏寿郎の切り替えは早い。
ついていけずにあたふたと戸惑う炭治郎に、昔の自分を見ているようで蛍も苦笑いを浮かべた。
杏寿郎のスイッチを入れ替えたかのような切り替えの早さには、蛍もよく突っ込んでいたものだ。
(…今もかもしれない)
うんうんと懐かしさを覚えて頷いていた頭が止まる。
「炎の呼吸は歴史が古い。炎と水の剣士はどの時代でも必ず柱に入っていた。炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ。他の呼吸はそれから枝分かれしてできたもの。霞は風から派生している」
蜜璃の恋の呼吸は、炎からの派生。
天元の音の呼吸は、雷から。
小芭内の蛇の呼吸は、水から。
そしてしのぶの蟲の呼吸は花からの派生となっているが、花の呼吸は元々水の呼吸からの派生である。
つまり全ての呼吸を辿れば、皆五つの基本の呼吸のどこかに当たることとなる。
しかしヒノカミ神楽を用いた呼吸がなんの派生であるのか。杏寿郎の知識にもない謎だった。
「竈門少年。君の刀は何色だ!」
「えっ? 色は黒ですっ」
「黒刀(こくとう)か。それはきついな! ははは!」
「きついんですかね…」
「黒刀の剣士が柱になったのを見たことがない。更にはどの系統を極めればいいのかもわからないと聞く」
呼吸は刀の色にも直結している。
故に炎の呼吸を統べる杏寿郎の刀は、鮮やかな赤い刃を光らせるのだ。