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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第33章 うつつ夢列車



「あの…すみません」

「うまい!」

「れ、煉獄さんっ」

「うまい!!」

「その…っお久しぶりです!」

「うまい!!!」

「あ。もうそれは。すごくわかりました」


 思い切って炭治郎が声をかけてみるも、全て「うまい」で返される始末。
 終いにはハツラツとした笑顔まで向けられた。

 会話になっているようでまるでなっていない。
 お手上げ状態にどうしたものかと二の足を踏んだ時。


「杏寿……あれ」


 購入したであろうアルミの茶缶を手にした人物が、反対の車両扉から現れた。
 その声は杏寿郎の名を呼び終わる前に萎む。
 ぱちりと丸くした目が、助けを乞うような炭治郎の目と合った。


「炭治郎っ?」

「蛍…!」


 途端に同時に二人の声が弾み上がる。


「善逸と伊之助まで! なんで三人が此処にっ?」

「蛍ちゃんッ! 元気にしてたッ? 久しぶりだねぇ!」

「うん。善逸も元気そうで何より」

「よかった、煉獄さんだけかと戸惑ってたんだ。やっぱり蛍も一緒だったんだな」

「継子だからね。師範、飲み物買ってきましたよ。どうぞ」

「うむ、ありがとう!」

((喋った))


 蛍が茶缶を差し出せば、すんなりと杏寿郎の口から「うまい」以外の単語が飛び出る。
 先程からそれ以外の単語は聞いていなかったものだから、思わず炭治郎と善逸は茶缶を受け取る杏寿郎を凝視した。

 もしや「うまい」でしか会話をしないのかと思っていたが違ったらしい。


「それで、どうして此処に──」

「オイ蛍!」

「あ。伊之助。久しぶり」

「オレ様はお前を大親分とは認めてねぇからな!?」

「え?」

「オイオイ…まだその話題続いてたのかよ。いきなりそんなこと言われても蛍ちゃんも困るだろ」

「うるっせぇ! 一度負かしたくらいで親分面される筋合いはねーって言ってんだよッ!!」

「一度じゃなかっただろ…」

「そうだぞ伊之助。あんなに何度も蛍に投げ飛ばされていたのに」

「投げ飛ばされてねェッ!!!」


 まるで子供のような駄々。
 呆れた顔をする善逸と苦笑顔の炭治郎とは違い、蛍はきょとんと荒立つ伊之助を見つめていた。

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