第8章 むすんで ひらいて✔
「二番目は宇髄さんで、三番目は煉獄さん。その次が不死川さんなの」
「へー……え? 四番目?」
おっかな柱ってそんなに力強かったの。
というか杏寿郎やっぱり強かったんだ。
道理で蜜璃ちゃんも組手で勝てない訳だ。
…あれ?
ということは…
「…僅差だった」
あ、視線で意図が伝わってた。
義勇さんは不死川実弥の次の順位だったらしい。
口調はいつもと変わらないけど。
…少しは気にしてるのかな?
「そうだ! ぜひ今度、蛍ちゃんも参加で腕相撲大会をやりましょっ」
「え?」
「そしたら蛍ちゃんと不死川さん、どっちが力自慢かわかるわっ」
急な蜜璃ちゃんの提案に思わず目を瞬く。
それは…う、うーん…楽しそうな気もするけど、それ以上に怖い。
だって相手はあのおっかな柱だし。
ここぞとばかりに腕へし折られそうな気がする。
「き、機会があれば、ね…」
そう曖昧に応えれば、それでも蜜璃ちゃんは満面の笑顔で頷いていた。
…本当に実現しなければいいけど。
「彩千代」
ふとそこで義勇さんに呼び止められる。
目を向ければ、足を止めた義勇さんの腕が不意に緩んだ。
「平気なら下りろ。もう自分で歩けるだろう」
「あ、うん。ありがとう…っ」
そうだ、ずっと義勇さんの背中を借りてしまってた。
慌ててその背から下りて地に足を付ける。
多少ふらりとしたものの、支えて貰わずとも立つことができた。
「大丈夫? 蛍ちゃん。無理そうなら遠慮なく言ってね? 私がまたいつでも運ぶから!」
「あはは…ありがとう。でも大丈夫」
また蜜璃ちゃんにお姫様だっこされる訳にはいかない。
軽く手を振って、笑顔で先を踏み出した。
「遅くまでつき合わせてごめんね。早く戻ろう」
夜が明ける前に。
二人をこれ以上、私に付き添わせる訳にはいかない。
その為にも早く藤の檻に戻ろうと先頭を切って歩く。
だから気付かなかった。
「本当に大丈夫かしら…いくら相手が不死川さんでも、頭突きだけで気絶するなんて」
「…暫く様子を見よう」
そんな会話を、二人がしていたことなんて。