第8章 むすんで ひらいて✔
「蛍ちゃん! よかったぁ目が覚めたのね!」
明るい声に隣を向けば、心底安堵した蜜璃ちゃんの笑顔があった。
見知った二人はいるけれど、此処は月の浮かぶ野外。
なんとなく見知った土道を、私をおぶった義勇さんが歩いている。
此処って…というか目が覚めた?
私、眠ってたの?
いや気を失ってた?
「あれ…確か…おっかな柱の所に、おはぎ突撃に行って…」
「おっかな柱? それって不死川さんのこと?」
あ、まずい。
つい口に出してしまった。
咄嗟に口を片手で覆うけれど、蜜璃ちゃんも義勇さんも大して気にしていないようだった。
…おっかないもんね、あの人…。
「お前は不死川の頭突きを喰らって意識を飛ばした。と言ってもついさっきのことだが」
頭突きって…あ。思い出した。
お館様の名前を口にしたら、あのおっかな柱の地雷を踏んで思いっきり至近距離で強烈な頭突きを喰らったんだ。
あまりの衝撃に目の前で星が弾けたようだった。
そのまま痛みに悶える暇もなく、一気に目の前は暗転したんだっけ。
「……痛い…」
「大丈夫? おっきなタンコブできちゃったもんねぇ…」
額に手を伸ばす。
触らずともヒリヒリと痛みが蘇る。
そ、そんなに大きなタンコブできてるんだ…みっともなくないかな。
蜜璃ちゃんの言葉に恥ずかしさが生まれて、慌てて義勇さんから顔を背けた。
「でもまさか蛍ちゃんがあの不死川さんと力で渡り合うなんて! 腕相撲でも勝てるんじゃないかしらっ?」
なんでそこで腕相撲?と頸を傾げれば、意図が伝わったらしい。
以前、柱達で力比べと称した腕相撲大会をしたのだと蜜璃ちゃんに教えてもらった。
腕相撲大会とな…楽しそうな響きだけど、柱達でやるなら常人離れした恐ろしいものなんだろうなぁ…。
そしてガチで勝負してそう。
柱って負けん気強そうな人ばかりだから。
「ちなみに順位は?」
「優勝したのは悲鳴嶼さんよ」
やっぱり。
あの天元をも上回る、柱の中で一番上背のある体格に見合った力の持ち主だったんだ。