第8章 むすんで ひらいて✔
流石に連続でおはぎ突撃をすれば予想されて返り討ちにあってしまう。
だから敢えて日付をずらして突撃に行っているけれど、何故か毎度鬼の形相で迎え討たれてしまう。
本当、鬼の私が感心する程の鬼の形相で。
「余所見してんじゃねェ!」
「ッ!」
それでも不思議と、何度も見ていれば慣れが出てくるというもので。
今日も顔怖いなぁなんて思っていたら、脇腹辺りの死角から拳を打ち込まれた。
咄嗟に肘を盾にして受ける。
ミシミシと骨は唸ったけど折れる程じゃない。
体制を低くして足を踏ん張って、素早く息を吸って肺を膨らませる。
ミシリと血管が浮かんだ肘を、右手で手首を掴み構えて盾に。
それでも風柱の打撃の威力は強い。
構えた体が後方に滑る。
どうにか吹き飛ばされることはなく、ふぅ、と止めた息を吐き出した。
月明かりの庭で、対峙した風柱の顔が…うわ。
「へェ、ようやく倒れなくなったか。面白ェ」
いや面白くない。
何その狂気染みた笑顔怖い。それはまだ見慣れてない怖い。
「テメェ今、全集中の呼吸を使ったなァ」
…一瞬の動きをしっかりと把握されていた。
こういうところは流石柱なんだと思う。
〝全集中の呼吸〟
それは杏寿郎に教えて貰った呼吸法の一つだ。
「日輪刀は持ってないらしいが、それでも鬼が呼吸を使うなんざ笑止千万。その喉潰してやる」
口角を異様につり上げて狂気染みた笑顔を浮かべてるけど、殺気がダダ漏れ。
こっわ。もう相手したくない逃げたい。
「私は鬼だけど、あんたが世間で言う鬼になるつもりはない」
「…あ?」
「喉は潰されたら痛いので遠慮します。あ、次のおはぎは栗餡おはぎなんで。捨てないよう、よろしく」
胡蝶の時とはまた違う。
このおっかな柱とは一対一で話し合っても噛み合わないことが多いし、血しか見れない気がするから止めておこう。
玄関先から出てくる義勇さん達を確認すると、頭を下げて踵を返した。
よし、お暇だ。