第8章 むすんで ひらいて✔
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「…はぁ」
「深い溜息ね。どうしたの?」
「うん…」
手荷物を抱えて歩く先で、蜜璃ちゃんが様子を伺ってくる。
些細なことでも気にかけてくれるのは嬉しいけれど私の気分は晴れなかった。
「女の子って難しい生き物だね…」
「え?」
明後日の方向を見て再び溜息。
私が此処で関わってる女子なんて数名。
その中で絞られると簡単に見えてくる、蟲柱の彼女だ。
あの一件以来、胡蝶は私に身体検査と称する拷問をしなくなった。
それと同時に、にこにこと常に絶やさず浮かべていた笑顔も向けなくなった。
いや、笑顔は向けてくる。
だけどどこかしらに青筋は浮かんでいるし、苛立ちは伝わってくるし、とにかく諸々感情が隠せてない。
…多分、隠すことを止めたんだと思うけど。
その分口調もきつくなって、言うことも手厳しくなった。
義勇さんと一緒にいることが多いから、義勇さんへの当てつけついでに文句を言われることも多い。
というか義勇さんに何か恨みでもあるのかなって思うくらい、当たりが強い。
水と油というか…反りが合わないのかなぁ。
ただ拷問はなくなったけど、身体調査はなくなった訳じゃない。
その証拠に、相変わらず月に一度は顔を見せるし、その時にはたっぷりと血を摂られる。
誰かに輸血でもするんですか?っていうくらい摂られる。
というか失血死するのでは?っていうくらい摂られる。
お陰で直後は暫くまともに動けない。
それって結局、拷問後と余り何も変わっていない訳で。
「蛍ちゃん…まるで恋に悩む青少年みたいな呟きね…」
「そんな青い春の方がよかった」
そっちの方がよかった。
自分に向けられる拷問の在り方で悩むとかしたくない。
というか普通はありえないそんな悩み。
やっぱり胡蝶は色々と手厳しい。