第8章 むすんで ひらいて✔
「…竈門禰󠄀豆子のことか」
「禰󠄀豆子にも会いたいけど、それとは違う。義勇さん達が言っている退治すべき鬼。それに会ってみたいなって」
どんな生き物なんだろう。
人を喰い殺している殺人鬼だから、恐ろしい形相とかしているのかな。
私みたいに牙や、鋭い爪はあるとして…角、とか?
子供の頃、絵や御伽話の空想上で知った鬼のように、角とか生えてたりするのかな。
「それは無理だ」
だけどそんな淡い期待は、きっぱりと義勇さんに断ち切られてしまった。
「鬼殺隊の総本部であるこの土地に、原則鬼は連れ込むことはならないとされている」
「で、でも…私みたいに監禁するなら、」
「それはお前がお館様に会わせるべき鬼だと判断できたからだ。この場にいられるのは、檻に入れて監禁しているからじゃない。お館様がお前を認めたからだ」
「……お館様も、倒すべき鬼は一人だけだって…」
「本を正せばそうだろう。しかし人喰い鬼となってしまった者は野放しにはできない。鬼が人に戻る方法がない現状、滅することでしか救えない」
鬼が人に戻る方法、ないんだ…やっぱり。
なんとなくわかっていたけど、はっきり告げられると今座っている場所から奈落の底が見えたような気がした。
この暗い檻の中以外に、私の生きる場所はないんだと。
「人に戻す方法は、鬼舞辻なら何か知っているかもしれない」
私の絶望を感じ取ったのか、続けて告げられた義勇さんの言葉に驚く。
「しかしこの百余年、鬼舞辻と出会った鬼殺隊は全て殺された。誰の前にも姿を残していない」
だから捜し出すことは困難だと言われたのもわかった。
それでも身を乗り出す。
「私…っ捜したい。無惨を。鬼の私なら、もしかしたら、」
殺されないかもしれない。
保証も確信も何もない。
藁にも縋るような思いだけだった。
それでも、もしほんの一筋の光でも見つけ出せるなら。
「駄目だ」
だけどそう伸ばそうとした手も、義勇さんの厳しい声に止められてしまった。