第8章 むすんで ひらいて✔
「鬼殺隊と成るのに必要不可欠なものは、呼吸を身に付けることと日輪刀に選ばれることだ」
「日輪刀に選ばれるって?」
「日輪刀を手にすると持つ者によって色が変わる。何も反応が見受けられなければ、剣士としての才覚はない。鬼を倒すことは不可能だ」
「あ。でもそういう人達は…っ」
何か言い掛けた蜜璃ちゃんが慌てて両手で口を押さえる。
また蛇柱に叱られるとでも思ったのかな…。
すると今度はぽんとその肩に手を置くと、無言で彼は頷いた。
あ、許可出た。
「あ、あのね…剣士になれなくても、隊士として務めを果たしてくれる人達もいるの。それが蛍ちゃんも出会った、隠さん達」
一生懸命言葉を選びながら説明してくれる蜜璃ちゃんに、うんうんと蛇柱が頷く。
説明を終えた蜜璃ちゃんが恐る恐る伺うように見てくると、尚更深く頷いた。
「全て甘露寺の言う通りだ」
うわお全肯定。
素晴らしいくらいの全肯定。
やっぱり蜜璃ちゃん相手となると類を見ない優しさ発揮するなこの男…。
これじゃ誰が生徒なのかよくわからないけど、ついでだし、と蛇柱がご機嫌な間に再び挙手をする。
「その日輪刀の変化って、どんなものなの?」
「…見たいか」
「うん」
見せて貰えるなら。
頷けば、徐に蛇柱が座布団から身を退いた。
腰を上げ私の前に仁王立ちしたかと思うと腰の鞘に手を…ん?
「剣士の命とも言うべき得物を見たいと申すなら、それ相応の覚悟を持ってのことと判断する」
「…え?」
すらりと鞘を抜いた蛇柱の日輪刀は、色よりもその形が凄く独特だった。
波を打つ曲線の刀。
抜くと言うより鞘の横から刃を抜いた。
どうやってそんなものが鞘に収まっていたのか疑問に思うくらい、ぐにゃぐにゃと道を進む蛇のようにうねり曲がっている刃だから、鞘からは穴から抜くんじゃなく、ああやって横から抜くんだ。
あの鞘どうなってるんだろう。
横からぱかりと開くなんて不思議な鞘だな………じゃなくて。
蛇だ。
刀も蛇だ。
だから蛇柱なんだこの男。