第8章 むすんで ひらいて✔
「えへへ。これは女同士の仲ですよ、天元様」
「天元様は、お夜食を召し上がっていて下さい」
「蛍のことは、あたし達が見てるんで」
「なんつーか、嬉しいような嬉しくないような…お前いつの間に俺の嫁達と仲良くなったんだ」
「別に大したことは…単に旦那に比べて出来た奥さん達なだけでは?」
「ほーお…この後朝方まで実践稽古な」
「っまだやるの!?」
いなり寿司をもりもり食べながら新たな課題を与えてくる天元に、思わず声が裏返ってしまう。
いくら奥さん大好きだからってその嫉妬心を私に向けないで欲しい。
私、鬼だから。そもそも女だから。
筋肉忍者の奥さんを掻っ攫おうなんて考えてないから。
旦那に比べて出来た奥さんなのは事実だけど!
「うし、ご馳走さん! 飯美味かった。山中に出るぞ蛍!」
「食べるの早っ」
そして全部綺麗に平らげてる!
屈伸運動をしながら体を解すと、すぐさま休憩所を出て山の中へと進んでいく。
そんな天元の迷いなき行動にまた滅多打ちにされるのかと肩を下げていると、ぽんと背中を優しく押された。
「天元様にボコボコにされたら、また綺麗にしてやるからさ」
「頑張ってきてね、蛍ちゃん!」
「天元様も楽しそうにしてることだし…もう少しつき合って貰えないかしら」
そんな綺麗な笑顔を浮かべて送り出されたら、何も反論できない訳で。
…仕方ないなぁ。
奥さん達の為に一肌脱ごう。
「じゃあもう少し旦那さんをお借りしますね。奥様方」
「ふわあっ奥様なんて…っ」
「っ…そんな気障ったらしく呼ばなくていいよ」
「なんだかこそばゆいわね…」
何気なく呼んだその名称に、意外な反応が戻ってくる。
恥ずかしそうにしてるけど、でも嬉しそうに。
抜け忍になってからはずっと四人で生きてきたって前に話してくれたし…こんなふうに言われるの慣れてないのかなぁ。
…可愛い。蜜璃ちゃんとは違った可愛さがある。
こんなに可愛いお嫁さんを三人も貰うとか天元は贅沢者だな…。
「よし」
今度こそ負かしてやる。
「あ。なんか燃えてる」
「いってらっしゃい」
「二人共頑張ってーっ」
ぱんと拳を掌に打って気合を一発。
あの贅沢者に一泡吹かせてやる。