第8章 むすんで ひらいて✔
「そうか…綺麗だったか」
「また見たいな」
「うむ。…しかし彩千代少女よ。その炎は幻覚だぞ」
「えっ!?」
「以前も教えただろう。炎の呼吸は炎を扱う技ではないんだ」
「え。でも、あの炎の虎は…」
「そう君の目が錯覚を起こしただけだ。水の呼吸も冨岡の洗練された腕が見せるからこそ、まるでそこに水が流れているかのように見える。それが極めし者の呼吸だ」
「そ…そうなの?」
驚いた。
あんなに鮮やかに目に焼き付いていたものが、まさか幻覚だったなんて。
でもそれだけはっきりと相手の目に映し出せる程のものだから、鬼をも倒せる技なのかな。
思った以上に奥が深い、かも。
「じゃあ触っても熱かったり冷たかったりしない?」
「そう感じはするだろう」
「そうなんだ…凄い、ね」
「彩千代少女も極めれば相手に幻覚を見せることなど容易になるぞ」
そんな凄いことできるようになるのかな…あんまり思えないけど…。
「でも、その…呼吸の技を出すには、日輪刀を使うんでしょ?」
はい、と挙手して問い掛ける。
「そうだ!」と力強く頷く杏寿郎に、疑問に思っていたことを更に問い掛けた。
「私、日輪刀扱えるの?」
「む!…それは…」
「それは?」
「無理だな!」
やっぱり。
日輪刀は鬼殺隊の証みたいなものだ。
鬼殺隊ではない、それも鬼である私がその象徴を手にできるはずがない。
「彩千代少女の呼吸は己の欲を抑える為。我らと扱い方が違う。故に刀は無くとも問題無い!」
「そ、そっか…ならいいんだけど…」
呼吸法と言っても刀を扱って生み出す技だけが全てじゃないだろうし。
杏寿郎みたいに鍛えれば炎の幻覚起こせるかな、とか思ったけど…無理だろうな。
ちょっぴり残念には思ったけど、私には私の目的がある。それを見失わないようにしないと。