• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第30章 石に花咲く鬼と鬼



「お待たせしました」

「あ、う…んッ!?」


 そこへ席を外していた鬼太郎がひょこりと姿を現す。
 準備が整ったのだろうと振り返った蛍は、鬼太郎の頭上で渦巻く奇妙な物体にびくりと体を震わせた。


「え…な、何…それ…」

「一反木綿(いったんもめん)。僕の仲間です」


 ふわふわと鬼太郎の頭上を舞っている奇妙な薄い白い布。
 ただの布切れかと思いきや、いつまでもそれは地面に落ちてこない。
 ふわりふわりと薄い布地を波立たせながら浮いているのだ。


「おいどんは一反木綿言うとばい。鬼太郎さんの右腕ばしよるとよ!」

「し…喋った…!」


 ひらひらの言うなれば白い手拭い。
 その先にはつり目の青い目のようなものが見えるが、それ以外には口も鼻もない。
 なのに確かにそこから声がしたのだ。
 こてこてに訛った方言で。


「ふぅん?…ふむふむ…あんさんが協力してくれるおと……男?」

「え」

「ほんかこつ男かね?」


 するすると蛍の周りを漂い始めたかと思えば、頭らしき先端を大きく傾げて青い鋭い目で凝視してくる。
 薄っぺらい布であっても妖怪は妖怪だ。
 思わず固まる蛍の前で頭をくるりと一回転させると、疑わしそうに一反木綿は元々細い目をより細めた。


「おいどんには女性の気配も感じるんやけどなぁ…」

「まじかよ…流石妖怪一の女好きだな…」

「流石? 流石ってなんば言いよるん鼠男。このおと…まさか男やなかと!?」

「男だ!!」

「うおっ吃驚したぁ…あんさんには訊いとらんて。この」

「男だッ!!!! これでこの話は終わりだな!!」

「…なんば怖い人間やねあれ…」


 カッと開眼した目で杏寿郎が蛍の前に立ち、声量だけで一反木綿を反り返す。
 ひらひらと弱く鬼太郎の後ろへと舞い戻る一反木綿に、溜息混じりに鬼太郎がその場を治めた。


「そんなこと今は関係ない。それより探索に協力して貰うぞ」

「任せんしゃい! 鬼太郎さんの頼みならガッテン承知!」


「…蛍」

「え?」

「あの手拭い男と話す時は気を引き締めるよう」

「…え、と…手拭い?」

「そうだ」

「相手は手拭い、だよね?」

「そうだ」

「最早男かさえも不明な手ぬぐ」

「あれは男だ見てわかる」

「…ぇぇぇ…」

/ 3467ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp