第30章 石に花咲く鬼と鬼
「──で、二手に分かれるのはわかったけど…」
ぷるぷると小さな紙縒りを持つ蛍の手が震える。
「なんでこの面子なのかな!?」
手にした紙縒りの先は色染めしてあり赤く染まっている。
反して同じ紙縒りを両腕で抱えるように持つ目玉親父のものは染まっていない。
「うむ。くじ運じゃと言うしかないな!」
「ぇぇぇ…くじ運…悪過ぎでは…」
今にも泣き出しそうな蛍の左右に立つのは鬼太郎と鼠男。
その紙縒りもまた先が赤く染まっている。
二手に分かれる選出方法は簡単な紙縒りを使ったくじで行われた。
結果、ものの見事に蛍は初対面である二人と行動を共にすることになったのだ。
「むぅ…蛍をそちらに任せるのは聊か不安も残るが…巽青年は俺と共にいた方がいいだろう。吸血木の気配がするのなら尚更」
「そうじゃのう。儂も息子と離れるのは心配じゃが儂より腕は立つし、巽君の心配もある。傍で見ていよう」
「ぉ…俺は炎柱となら文句などありませんが…その、吸血木の名残りって…本当に…?」
「微弱ながら感じます。種を何処かで貰った記憶はありませんか?」
「そんな怖いこと言うなよッ俺は切り裂き魔以外で変な現象なんて見てないぞ!?」
無表情にじっと見てくるからこそ尚のこと怖い。問いかける鬼太郎から顔を背けるようにして、巽は必死に頸を横に振った。
誰が好き好んで大木になどなろうか。
「まぁ待て鬼太郎。種を植え付けられたとは限らん。何処かで吸血木の種をばら撒いておる妖怪とすれ違っただけかもしれんしのう」
「それもそれで怖いけどな…」
「ふーむ。どうであれ火急であることには変わりないな。一刻も早く諸悪の根源を見つけ出さなければ!」
故に巽も隊士達に弁当を届ける任務は後回しとなり、杏寿郎達に同行することになったのだ。