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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第7章 柱《参》✔



「あ! 戻ってきたわっ」

「む!」

「……」


 月明かりの下。見知った三人の顔を中庭で見つけて、ほっと息をつく。
 一応と道先案内をしてくれた時透くんに頭を下げて、それからお館様の奥さんであろう、あまねさんにも頭を下げた。


「お館様は先に休んでおいでです。あまね様も、どうぞ休まれて下さい」

「この先のことはご心配なされぬよう! 我らで対処します故」

「承知しました。お心遣い感謝致します」


 時透くんと杏寿郎の提案に、丁寧に頭を下げるあまねさん。
 その大きな瞳と一瞬だけ合わさって、慌てて頭を下げた。
 なんというか…身形から言動まで、住んでる次元が違う感じがする。
 お館様とは別の意味で、不思議な雰囲気のある女性だなぁ…。


「それじゃあ俺はこれで」


 あまねさんが姿を消すと、あっさりと私の身柄は杏寿郎達に引き渡された。
 そのままあっさりと去っていく時透くんを見送りながら、複雑な思いに悩まされる。

 私に興味を示さないことは、本音としては嬉しい。
 鬼であるからと、人とは違う"枠"で見られる。
 その視線を少しでも減らせるなら願ったりだ。

 でもそれは、お館様との約束を果たすには困難な壁となる訳で。

 興味がない分、歩み寄りもできない。
 そもそも私を気持ち悪いものとして見ている時透くんの目を変えることなんてできるのか…自信ない、な。


「彩千代少女」


 呼ばれてはっとする。
 見れば、其処にはいつもの強い目を持つ杏寿郎がいた。
 強いけれど、怖くはない瞳。


「お館様との対面はどうだった」

「…うん。優しい人だった」

「でしょっ!? お館様はどんな偏見も持たずに、その人の心に向き合ってくれるお人なのっ」

「うん。蜜璃ちゃんの言う通りだと思う」

「して、どのような話を?」

「えっと…色々だよ。大事な話だから、他言無用しないようにって言われて…」

「むぅ。そうか!」

「必要なら、お館様から俺達に報告がくるだろう。一先ず戻るぞ」


 訊きたそうにしている蜜璃ちゃんと杏寿郎の姿勢を止めたのは、静かに制止を入れた義勇さん。
 答えられないことがほとんどだから助かった。

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