第7章 柱《参》✔
「ありがとう」
「お礼言われるようなことも言ってないけど」
「あ、いや、」
「これみよがしに恩着せようとしないでくれる?」
「そんなつもりは」
「だったらお礼より謝って」
「すみません!」
だからそんなつもりはないんだけど!
総合的に手厳しいなこの少年!
「君ってさ…なんか、変だよね」
「へ…変?」
そう、かな。
そんなド直球に言われたこと、あんまりないかも…変、かな。
「待機所で会った時もそうだった。見ればすぐに鬼だってわかったけど、なんだか変な感じがした」
「変、とは…」
「他の鬼と、何か違う感じがする。それがなんなのか少しわかったよ」
「え?」
わかったって何が。
気になる言葉に、つい顔を食い入るように見てしまう。
「君、体は鬼なのに中身が鬼じゃない。お館様も言っていたけど、中身はただの人間みたいだ」
沢山の鬼を見てきたであろう、柱である時透くんもそう言うなら…本当に、私は他の鬼と違うのかな。
なら普段の鬼はどんな感じの生き物なんだろう。
「そ…そっか。ありが」
「話聞いてた? お礼言われること言ってないけど」
つい出そうになったお礼の言葉は、感情の見えない冷たい声に止められた。
「つまり気持ち悪いってこと」
淡々と変わらない声で告げられる。
その言葉には何も返せなかった。
他の鬼が、どんなものなのか知らない。
でもお館様も、杏寿郎も、時透くんも。皆一様に私が他の鬼と違うと言うのなら……それは、気味の悪いものなんだろう。
「……」
「止まらないで。さっさとついて来て」
淡々と浮き沈みのない声。
微塵も変わらない雰囲気のまま先を促される。
止まりそうになった足をどうにか動かすことができたのは、その先で待っていてくれる人達を、思い出せたから。