第7章 柱《参》✔
…そういえば。
「時透、無一郎…くん。だっけ」
「何、急に」
出会いは最悪だったけど、この少年も柱の一人。
となると、この子にも私を認めて貰わなきゃならないんだ…。
「私は彩千代、蛍って言うの。鬼じゃなくて、名前で呼んで貰えると…その、助かるんだけど」
「鬼は鬼でしょ」
恐る恐ると希望を伝えてみれば、仰る通りでうん手厳しい。
口調も雰囲気も異なるけど、伊黒小芭内と同じですっぱり断られてしまった。
「大体なんで、すぐ忘れるのに呼ばなきゃならないの?」
あ、忘れる気満々なんだね…手厳しい。
「何を企んでる気なのか知らないけど、俺には何しても無駄だよ。煉獄さん達とは違うから」
話に無関心なようで、あの場で聞いたお館様との話はちゃんと頭に入ってたみたいだ。
…ただ私は、柱の間柄や関係性なんて知らない。
それでも私だから知っていることはある。
「杏寿郎や義勇さん達と…時透くんが違うのは、当たり前だよ。同じ人間なんていない」
「そういう意味じゃなくて、」
「鬼である私を受け入れてくれたから、杏寿郎達の決断が凄いなんて言わない」
わかってるよ。時透くんが言いたいことは。
でも私を理由にして彼らを否定するのは、私が許せないから。
「だから鬼である私を受け入れた彼らの否定も、させない。私より長い時間、時透くんは柱達を視てきたんでしょ。だったらたった一人の鬼の存在で、今までの彼らを否定しないで」
「……」
「…あげて、下さい」
じっと無表情で見てくる視線に耐え切れず最後は委縮してしまった。
うう、相手は年下の男の子なのに。負けた気分。
思わずしょんぼりしていたら、向けられていた視線が不意に逸らされる。
「…別に。否定なんてしてないよ」
内心斬られるんじゃないかと冷や冷やしたけど、素っ気無い返しだけで済んだ…よかった。
時透くんは、あのおっかな風柱よりは好戦的じゃなさそうだ。
そして何よりその返事にほっとした。
お館様と約束した手前認められなきゃとは思うけど、だからって鬼殺隊の内部を引っ掻き回したい訳じゃないから。