第29章 あたら夜《弐》
「きょ、うじゅ…っろ…杏寿、ろ…っ」
切なげに、愛おしげに。名前を呼ぶのは求める行為に等しい。
「ふ…っ蛍…ッ」
そこに想いを重ねて名を呼び返す。
顔を上げれば自然と唇が重なり深く繋がった。
ポルチオを揺さぶるように刺激すれば、杏寿郎の快楽に弱い蛍は瞬く間に絶頂を駆け昇る。
本来ならその高みを見守り次の責めへと移りたいところだが、一度だけだと蛍の優しさで許された行為だ。
最後の快楽を貪るように、乱れた着物の隙間から差し込んだ掌で蛍の下腹部をぐっと押さえた。
「ひぁ…ッんぅッ!」
「ッ…!」
過敏な膣奥を内側と外側から挟み込まれて、きゅうきゅうと痙攣を起こす。
尚一層高く上がる蛍の嬌声さえも飲み込むように食らい付いたまま、杏寿郎は強い締め付けに耐えて腰を揺らし続けた。
「はンッぅ…っ~…!」
甘く熱を高めた声は、全て杏寿郎の口内へと消えていく。
びくびくと強い快楽の波を起こし、蛍の身体は絶頂の渦へと飲み込まれた。
同時に終わりを見せない白濁の熱を最奥へと放つ。
蛍の身体の波に合わせるように、どく、どく、と精が吸い込まれていくのを直に感じた。
「ふぅ…っフ…!」
一滴残らず搾り取るように戦慄く蜜壺に、みしりと杏寿郎の額に耐久の血管が浮く。
一瞬でも気を許せば腰が砕けて、反り屋根とあっても滑り落ちてしまいそうだ。
それでも互いの唇の熱は離れることなく、口付けあったまま快楽がさざ波へと変わるまで繋がり続けた。