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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第7章 柱《参》✔



「さて、それじゃあ本題にも入らないとね」

「え?」


 本題?
 これは前置きだったの?

 唐突に切り替えられた話題に、一体幾つ話があるんだと思わず訊き返してしまう。


「君の、今後の鬼殺隊での立場について」


 でもその言葉には緊張が走った。
 …そうだ。
 私がそもそも此処へ呼ばれたのは、それが原因だったんだ。


「元々は私と、妻のあまねや我が子供達。それから鬼殺隊の柱のみだった君の情報が、今や隠達にも筒抜けになってしまった。そのことは、無一郎にも再度言って聞かせたから」

「…俺は、鬼には興味ありませんので…」

「それでも蛍の存在は私達には希少なものだからね。最低限の注意は払わなきゃいけないよ」


 あ…蜜璃ちゃんの言う通り、時透無一郎は私のこと知ってたんだ…。
 知っていて綺麗に忘れてたとか…無関心もそこまでいくと凄いな。


「隠達には口止めをさせているけれど、それでも不穏因子はすぐに広がるだろう。その為、蛍の今後の身の振り方について考えないといけなくなった」

「…すみません」

「君が謝る必要はないよ。いずれは辿る道だった」


 そうだとしても、これは範囲外の出来事だったに違いない。
 監禁でもなんでも、命じられたことには従うしかない。


「蛍。君が此処へ来てから、どれ程の時間が過ぎたか知っているかい?」


 …時間?


「さ、さぁ…考えたこと、ありませんでした…」


 唐突な問いだった。
 思考を巡らせてみるけど、答えは出てこない。
 牢獄には日付を示すものなんて置いてなかったから。


「一年と半年だよ」


 …一年以上も…そんなに経ってたんだ。

 最初の頃は日々獄中生活で外の様子は小さな窓からしか伝わらないし、当然行事なんかも何も関わっていなかった。
 杏寿郎に稽古をつけられ始めて、ようやく人らしい感覚は取り戻せたけど…それまでは毎日変わることのない檻の中だけを見続けていた。

 その間にも時間は等しく過ぎ去っていたんだ。
 姉さんを失ってから、もう一年以上も経っていたなんて。


「丁度今から半年後に柱合会議がある。その時に、私は君の在り方に答えを出そうと思っている」

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