第7章 柱《参》✔
個性の塊である柱の皆が、一心にお館様を慕う理由がなんとなくだけどわかった気がする。
この人は、無意識に自分が欲してる言葉をくれるんだ。
押し付けるんじゃなく、寄り添うようにして。
「…ありがとう、御座います…」
だからと言って昨日今日出会ったような人に、簡単に身を預けるなんて出来ないけれど。
気持ちは嬉しかった。
それは正直な気持ちだ。
一心にお礼を伝えて、頭を下げる。
それでも私は鬼で、この人は人間だ。
その立ち位置は変わらない。
「でもこれは、私の道、だから…」
消せない罪。
それを抱きかかえるか、捨てるか、はたまた呑み込むのか。
どうなるかは自分自身にもわからない。
だからこそ簡単に他人任せになんてできない。
「自分で、責任を持ちます」
これは私の道だ。
そう義勇さんも言っていた。
だからどんな形であれ、私が最後まで見定めていくものだ。
「…うん」
じっと見据えた、白い瞳の先。
ゆっくりと瞬くと、その人は何故か優しく微笑んだ。
「それが蛍らしさなんだね。…義勇が目を止めるはずだ」
よく、わからないけど…そういえば義勇さん言ってたっけ。私は私のままでいれば心配ないって。
意味はわからず終いだったけれど、気付けば本音を話していた。
…この人の空気が、そうさせるのかな。
ほとんど初対面でここまで赤裸々に話せたのは、此処へ来て初めてだったかもしれない。
「ならせめて、その蛍の姿を見守らせて欲しい。それなら許されるかな?」
つい偉そうなことを言ってしまったけど、元から私にどうこう言う資格はないんだ。
その頼みに、はいと頷いて返せばほっとした笑顔を向けられた。
「ありがとう」
「お礼を言われるようなことじゃ、ありません、から…」
「私が言いたかったんだよ」
感謝すべきは、寧ろ私の方なのに。