• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第3章 浮世にふたり



「アオイから聞きました。あの鬼の世話の代わりをしてくれたんですって。包帯、ありがとうございます」

「…彩千代蛍だ」

「はい?」

「あれにも名前はある」

「知っていますよ。でもそれで呼ぶ必要が何処に?」


 互いに感情は荒げていないが、ぴり、と空気が張り詰める。
 僅かに眉を潜めたものの、義勇はそれ以上反論しなかった。

 鬼殺隊にいる隊士の大半が、鬼への強い憎悪や復讐心を持っている。
 それは義勇やしのぶも例外ではない。
 このやり取りも不毛だと、しのぶの横を無言で通り過ぎた。


「無視ですか? 私の声聞こえてましたよね? 冨岡さん」

「……」

「そんなだから皆に嫌われるんですよ、冨岡さん」

「……」


 ぴたりとまたも義勇の足が止まる。
 微笑むしのぶの言葉の針は容赦がない。


「何故あの鬼の肩を持つんです? 人と鬼は馴れ合えないって、いつも私の意見を否定してますよね? ねぇ冨岡さん」

「…それはお前もだろう。仲良くすればいいなんて、上辺の戯言だ」

「戯言なんて。私は本気で言っているのに、悲しいですねぇ」


 凡そ悲しみなど持ち合わせていない笑顔を向け続けるしのぶに、ようやく義勇も目を向けた。


「なら"仲良く"してみたらどうだ」

「してるじゃありませんか。毒はいつも優しいものにしていますし、殺さないように気を付けていますし、手当ても怠っていませんし。あの鬼が全ての罪を痛みを受けることで浄化できれば、きっと私達は更に仲良くなれます」

「本気でそう思っているのか」

「本気ですが?」

「ならもう十分じゃないのか。あいつが殺した人間は三人。お前があいつを拷問した回数は、今回で四度目だ」

「何を言っているんですか、冨岡さん。惚けてます?」


 頸を傾げて、可笑しそうにしのぶが笑う。


「彼女が殺したのは男三人、女一人。計四人、殺しているじゃありませんか」

/ 3463ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp