第7章 柱《参》✔
「冨岡様。こちらへ」
それ以上は何も訊けなかった。
あまねさんに呼ばれて、一度目を合わせた義勇さんはそのまま背を向けてしまったから。
追うように視線を上げて目が合ったのは、更に離れた所でこちらを見ていた杏寿郎だった。
言葉はない。
じっとこっちを見てくる二つの強い目は、まるで暗闇に灯された炎のようにも見えた。
初めて檻の中から見た時は、なんだか捕食者の目みたいで怖いなぁと思っていたのに。今は不思議とその気はない。
口角を上げた表情のままうんと頷かれて、つられて私も頷き返した。
…そうだ。
傍にはいないけど待ってくれる人がいる。
共に足を運び、付き添ってくれた柱が三人もいてくれたんだ。
もう口枷はない。
深呼吸を、ひとつ。
「早く。お館様を待たせたら駄目だよ」
時透無一郎の言葉に押されて、私もその場から背を向けた。
ほんの少し、後ろ髪を引かれながら。