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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第7章 柱《参》✔



 今まで幾つもの柱の屋敷を見てきた。
 どれも立派なお屋敷だったけど、今回訪れたお屋敷はその比じゃないことが一目でわかった。


「さぁ、着きました。此処が産屋敷邸で御座います」


 一目じゃ見渡せない程の広い敷地。
 白い玉砂利で整理された綺麗な庭。
 何処が玄関かもわからない。
 八十畳はありそうな広い広い部屋の前の庭で、鴉はようやく羽根を畳んだ。

 空飛ぶ優美な姿に導かれ、訪れた産屋敷邸。
 その土地を杏寿郎達と共に踏む。

 羽根を畳んだ鴉が屋敷の主を呼びに行くかと思えば、それより先に広い部屋の奥から人が姿を現した。
 それは多分、此処にいた全員が予想した人物。


「あれ? なんで煉獄さん達が?」


 じゃなかった。


「時透か! お館様が呼ばれたのでは!?」


 姿を現したのは、あの一件で関わった霞柱。
 確か名前は時透…無一郎、だ。


「俺もお館様に呼ばれたんです。鬼を連れて来るとは聞いてたけど…煉獄さん達のことは聞いてなかったですね」

「蛍さんの檻に迎えに行けば、柱の皆さんが揃っていたんですよ」

「ふぅん…じゃあ皆知ってたんだ」


 何を、とは問わなくてもわかった。
 気怠げなその目が、私を捉えたから。

 そう言えば後で蜜璃ちゃんが頸を傾げていたっけ。
 柱は全員お館様から私のことを聞かされていたはずだから、あの少年も私のことは知っていたはずなのにって。
 でも私との対面時に知らない顔をしていたのは、嘘には見えなかったけど…。
 今の言葉もそうだ。
 やっぱり私のことを知らなかったんじゃないかな。


「無一郎にも教えたはずだよ」


 緩やかな何気ない一言だった。
 なのにその声が届いた途端、周りの空気が一変する。


「!」


 周りにいた柱達が一斉に腰を下り片膝を地面に付く。
 その様に驚いていると、部屋の奥の襖が開いているのに気付いた。


「鬼殺隊のご当主、産屋敷耀哉様です」


 ふわりと私の肩に停まった鴉が告げると、皆と等しく鴉も小さな頭を垂れた。
 慌てて私もその場に膝をつく。

 柱に初めて出会った時のような威圧感は全くなかった。
 それでも周りを囲む空気は、柱に出会ったどの空気とも違う。

 緊張が走る。

 静々と畳を進む微かな足音。
 下げた視界では整理された玉砂利しか見えない。

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