第7章 柱《参》✔
「蛍さん」
「うん」
催促するように呼ぶ鴉を見上げて、頷く。
ザッ
暗い地下通路のような道を踏み出す足。
けれどその足音は私のものじゃなかった。
「その話、詳しく聞きたい。俺も同行させてもらおう!」
「私もっ蛍ちゃんは何も悪くないこと、ちゃんとお館様に伝えなきゃ…!」
「彩千代」
ずいっと前に出る杏寿郎に、はいっと挙手する蜜璃ちゃんに、口枷を向けてくる義勇さん。
当然のようについて来る気満々の三人に、思わずぽかんと見やってしまった。
あ、ついて来るんだ…いや、いい、けど。
産屋敷って人が、許可するなら。
「詳しい話なら私が道中教えてあげるわ煉獄さん。蛍ちゃんの作ったおはぎはね、とっても美味しいのよっ」
「む! それは俺も食べてみたい…!」
「…不死川はカブト虫が好きらしい」
「むむ! 初耳だなそれは!」
いや詳しい話の論点違うそれ。
と思ったけど、なんだか力が抜けた。
その時になってようやく自分の体が力んでいたことを知った。
日頃と変わらない三人の姿に、なんだかほっとしたんだ。
…ありがたい、のかも。
「対面時のことは産屋敷に従って貰いますが、同行は良しとしましょう。では皆様、吾輩について来て下さい」
配慮してくれた鴉の先導で、私も足を進める。
この長く暗い通路を通り抜けたことは幾度とあるのに、此処最近で一番緊張している気がした。
ようやくこの鬼殺隊の筆頭当主と会うんだ。
個性の塊である柱の皆が一様に慕う人なんて。
一体、どんな人物なんだろう。