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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第7章 柱《参》✔



「さあ行くぞ、彩千代少女」


 凛とした声で催促される。
 行きたいけど…でも、義勇さんの言い付けを破っていいのかな…。


「これはこれは」


 迷いながら義勇さんに視線で訴えようとすれば、聞き慣れない声を耳にした。
 杏寿郎のように通路の奥から現れたんじゃない。
 声の主は、私の檻の小さな窓から現れた。


「柱が三人もお揃いで」


 ふわりと音もなく格子に鉤爪を絡め停まる。
 真っ黒な体に、藤色の襟巻をしている一羽の鴉。


「賑やかな夜ですね。こんばんは」


 …………喋、った。

 待って、喋った。鴉が喋った。やっぱり喋った。
 それも義勇さんの鴉よりも、凄い流暢な声で。


「初めまして、彩千代蛍さん。吾輩は産屋敷 耀哉の使いの者です」


 え…私に、話し掛けてる?
 というか、


「うぶやしき、かがや…?」


 って誰?

 それなりに杏寿郎の下で訓練は積んだ。
 だからわかる。
 その名を口にしたら、檻の外の柱達の気配が変わったことが。


「お館様が…!?」

「よもや…」

「……」


 え。うぶやしき かがやって、あのお館様なの?
 随所で柱の皆が口にしていた、あの?


「今宵は貴女をお誘いする為に参りました。どうぞ、産屋敷邸へいらして下さいませんか?」


 ……は?

 一瞬、鴉の言葉を理解するのに時間を要した。
 いや言ってることはわかったんだけど。
 なんて? 産屋敷邸?
 邸? おうち? 屋敷? 産屋敷? 産屋敷の屋敷?

 ややこしいな待て待て落ち着け。深呼吸をしろ蛍。
 それよりも真っ先に問うべきことがある。


「こ、こんばんは」

「こんばんは」


 恐る恐る声を掛けてみれば、当然の如く挨拶を返された。
 やっぱりカラクリなんかじゃない。あの鴉は本物だ。


「…なんで…」

「疑問があればお答えしましょう。産屋敷は、貴女と」

「なんで喋れるの?」

「……はい?」


 あ、頸を傾げた。
 言葉、理解できてないのかな。


「それは…吾輩の、ことでしょうか?」

「うん」

「…吾輩に興味があるのですか?」

「うん」


 大きく頷く。
 そこ大事だから。
 鴉はカァとしか鳴かないものと思い込んで数十年生きてきたから。
 普通に素通りできないでしょ。

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